消化のプレイングマネジャー、膵臓・肝臓・十二指腸

考究:食と身体(5)婚姻の神ジュノー篇

2018.08.31(Fri) 大平 万里
筆者プロフィール&コラム概要

膵臓の消化酵素と肝臓の胆汁が消化を担う

膵臓、肝臓、十二指腸などの位置関係と部位名。肝臓で作られた胆汁は、胆嚢に一時蓄えられて濃縮され、十二指腸に食べ物が入ると排出される。
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 膵臓からは膵液が、肝臓からは胆汁が分泌され、それぞれの液は膵管で合流して十二指腸へ放出される。消化酵素が含まれているのは膵液のほうである。膵液に含まれる消化酵素には、デンプン(多糖類)を分解する「アミラーゼ」、胃である程度細かくなったタンパク質(ポリペプチド)を分解する「プロテアーゼ」(トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼなど)、脂肪を分解する「リパーゼ」などがある。

 消化酵素のうち、プロテアーゼはタンパク質である消化酵素自身あるいは膵臓自体を分解しないのか、という心配が出てくると思うが、「不活性な形で膵臓から分泌されるから大丈夫」というのが答えだ。十二指腸に放出されるときに初めて活性化して、胃から来るタンパク質を本格的に分解する(胃のペプシンも胃液中で酸性状態になることで活性化する)。

 また、脂肪が消化されるには、胆汁が必須である。というのも、脂肪は水に溶けないのでそのままでは大きな油滴状態になっていて消化酵素が働きにくいのだ。そこで、胆汁に含まれている胆汁酸という物質が洗剤の界面活性剤のような働きをして脂肪を細かく分散させ、リパーゼがうまく働くようになる。なお、胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成される。

 さらに、膵液や胆汁はアルカリ性であり、胃で強酸性になった消化物を中和し、その後の消化吸収の安全性を担保する。これもまた膵液や胆汁の重要な役割である。

十二指腸は消化吸収の管理センター

 しかし、食べたものを消化によって「身内」にするだけなら、膵臓、肝臓、十二指腸は単なる仲人のようなものである。それでは、神々の女王ジュノーというより、近所の世話好きのおばさんという感じだ。

 実は、十二指腸からはさまざまなホルモンが分泌されており、状況に応じた消化活動全体の調節が行われているのだ。

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1964年東京生まれ。生物・化学系ライター。熊本大学理学部生物学科卒業。北海道大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。旧工業技術院(現・産総研)、秋田県立農業短大附属属研究所などの流動研究員、高校教諭等を経て現在に至る。最近はその辺に転がる岩石の来歴が気になってしょうがない。


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