ところが、2000年代に入り、財閥はどんどん大きくなったが、雇用は増えない。経済格差は拡大する。

 それはそうだ。大企業の投資はどんどん海外に流れ、IT投資は増えても雇用増にならない。増えるのは、非正規職やアルバイトなど不安定な職ばかりだったのだ。

 これではいけない、とばかり、文在寅政権は新しいアプローチを目指す。

 まずは、最低賃金を思い切って引き上げる。非正規職の正規職転換を進める。労働時間を短縮してワークシェアリングを促進する。公務員、公企業採用を増やす。

 賃上げ→消費拡大→企業業績向上→投資拡大→雇用拡大、というシナリオだった。

 ところが、1年経過しても成果は全く出ない。失業率は最悪の水準が続く。最低賃金の引き上げで雇用主は従業員を減らし始める。

 雇用は増えない、失業率は下がらない。格差は拡大する。

インドでの面談

 そんな状況の中で、文在寅政権とサムスンとの関係に転機が訪れた。

 6月9日。文在寅大統領がインド訪問の際に、サムスン電子のスマートフォン工場を視察し、李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)副会長が案内したのだ。

 このとき、文在寅大統領はサムスンの投資がインド経済の発展に貢献していることを称えたうえで「韓国内でも投資を拡大してください」とつけ加えた。

 これを受けて、8月6日、金東兗(キム・ドンヨン=1957年生)経済副首相兼企画財政相がサムスン電子の韓国内の半導体工場を視察することが決まった。

 李在鎔副会長が海外出張から急遽戻って案内することも決まった。