こうした状態に割って入ったのが富士フイルムであることを考えると、ゼロックスの株主が描いていた単体での再生プランを上回るリターンを富士フイルム側が提示できなければ、彼等が買収に応じないことは容易に想像できたはずである。

 だが富士フイルムが提示した条件はこれとは正反対であった。

 富士フイルム側にはキャッシュアウトがなく、約2500億円の特別配当だけで経営権を掌握するというものであり、圧倒的に富士フイルム側に有利な内容となっていた。これに対してゼロックスの株主が反発するのはごく自然なことであり、実際、富士フイルムによる買収計画が発表されると、株主らは買収に反対する書簡を公開している。

 買収後のガバナンスのプランもよくなかった。当初、富士側が提示したスキームでは、ゼロックスのジェイコブソン氏が引き続きCEOを務める予定となっていた。ゼロックスの株主は、ジェイコブソン氏の退任を求めていた経緯を考えると、このスキームでは、ジェイコブソン氏らゼロックス経営陣が保身のため富士フイルム側に泣きつき、買収を持ちかけたと見なされても致し方ない。

現実には買収しない方が得策?

 当たり前の話だが、外国の企業が相手国の企業を丸ごと買収するためには、あらゆるステークホルダーへの配慮が求められる。ゼロックスは近年業績が低迷しているとはいえ、かつては米国の名門企業としてその名が知られた企業である。

 これは日本の名門企業が外資系企業に丸ごと買収されるケースを考えれば容易に想像できることであり、日本人はこうした状況に配慮できる感性を持っているはずだ。ところが日本企業が外国企業を買収する時には、こうした配慮を欠くケースがあり、今回も広い意味ではその部類に入るといってよいだろう。