安倍晋三首相は3月1日の参院予算委員会で、コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」)の改訂案について触れ、「上場企業に対し、女性の取締役を1人以上登用することを促す」と述べた。金融庁が3月13日に公表したCGコードの改訂案には、「ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる」形で取締役会が構成されるべきとの文言が盛り込まれ、女性取締役の登用を促す方向で検討が進んでいる。

 今回の改訂は、日本企業の国際競争力を高めるためのものであると一部メディアは報じている。しかし、「女性取締役が増えると国際競争力が高まる」というロジックは極めて曖昧である。

 女性が活躍し、日本企業の国際競争力が高まることは誰もが願うことである。多くの人が願う政策目的だからこそ、エビデンスに基づいた政策立案とクールな政策評価が必要であろう。6月の株主総会シーズンを前に、女性登用が進んだ欧米のエビデンスを確認し、CGコードとその改訂案を批判的に検証することとしたい。

女性取締役の存在はCSR経営を高度化させるのか

 CGコードの原則4-7は、独立社外取締役に期待する役割として「経営の監督」と「経営方針や経営改善についての助言」を挙げている。しかし今次改訂案は、女性取締役の登用が監督機能の強化につながると考えているのか、助言機能の強化につながると考えているのか特段明示していない。

 女性取締役に対し監督(モニタリング)と助言(アドバイス)の両方を期待しているのかもしれないが、これはブレーキとアクセルを同時に踏むことを求めるようなものである。