姿はさまざまでも定番の卵焼き、失敗しないコツは?

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(5)卵焼き

2018.03.30(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

戦時中は乾燥卵を温湯で戻して――昭和19年

『栄養と料理』1944(昭和19)年2月号の表紙と「栄養と料理カード」。乾燥卵は40~60℃の温湯を加えて15~20分おいて戻してから使う。
拡大画像表示

 乾燥卵を戻して作る卵焼き。乾燥卵は、日本では1936(昭和11)年以降の特許公報で確認できる。世界的にも軍隊用の携帯食として重宝されていた。卵は栄養価が高く、料理の用途も広いが、携行も保存も困難。それを乾燥させれば汎用性が高い。食品加工技術は軍用目的を機に発達したともいえる。

 単位の表記は尺貫法とメートル法が混在して分かりにくいが、当時の乾燥卵は8gで生卵1個分に相当する。分量の温湯を加えて15~20分放置して戻し、泡立て器で攪拌してから調味する。

 このようにして作る厚焼き卵は、卵の弾力性や風味など生卵となんら遜色がないのだろうか。しっとりと味わいよく仕上がるのだろうか。味わってみたいものだ。乾燥卵は、戦後はふりかけや即席卵スープ、卵粉末、サプリメントなどに発展し、私たちの口にも入っている。

実はすり身の入った伊達巻き――昭和30年

1955(昭和30)年4月号。絵から巻きすで巻いて仕上げているのが分かる。味の素の広告も。
拡大画像表示

「卵やき」と称して紹介しているが、卵液に白身魚のすり身を合わせ混ぜて焼いた「伊達巻き」といえる。今ではお正月にならないとあまり登場しないが、4月号なので花見のお弁当におすすめのものとして紹介したのだろう。当時は、手間のかかる伊達巻きも家庭で作る余裕も腕前もあったのだろう。が、抜け道として、「すり身は入れなくてもよいが卵1個に対して大匙1が適量」と明記してありホッとする。

 表面の材料表に水と味の素が併記してあるが、裏面の作り方で「だし(叉は水と味の素)」とあり、わざわざだしをとらなくても水と味の素で代用できると簡便な方法を示す。味の素がよく使われていた時代だ。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。