原油市場における「ブラックスワン」は何か?

サウジアラビアの減産はいつまで続くのか

2018.02.02(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52232
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 汚職騒動が終息に向かっていることは確かだが、サウジアラビア政府は当初想定した規模の現金を手に入れることはできないのではないだろうか。そうだとすれば国民へのバラマキはますます国家財政を圧迫することになる。

 昨年末のブルームバーグの取材に対し、サウジアラビアの財政当局関係者は「同国の石油収入は2023年までに約80%増加し、10年ぶりに財政収支が黒字となる」見通しであることを明らかにした(2017年12月26日付ブルームバーグ)。

 その予測によれば、2017年の石油収入は4400億リヤル(約13兆円)だが、原油価格の上昇などで2023年には8014億リヤル(約23兆円)に押し上げられるという(一方、非石油収入は32%増の3370億リヤル(約10兆円)にとどまる)。ムハンマド皇太子の改革の目標期限は2030年だが、官僚レベルでは「当分の間は石油収入が増加しないと財政をマネージすることはできない」とみていることが分かる。

 北海ブレント原油価格は現在1バレル=70ドル前後だが、気になるのはこの予測では原油価格を1バレル=75ドルと想定していることである。「シェールオイルの増産で原油価格は早晩頭打ちになる」と覚悟しているのだろうが、石油収入を今後5年間で8割増加させるためには原油価格の上昇では全く足りず、相当規模の増産が必要不可欠である

 2014年後半からの原油価格下落は「逆オイルショックの再来」と言われてきた。「逆オイルショック」とは「原油価格を維持するために減産してきたサウジアラビアがその痛みに耐えかねて増産に転じたことで原油価格が急落した出来事」を指す。今回の協調減産もサウジアラビア主導でなされているが、「財政面から減産努力を限界」と判断してサウジアラビアが増産すれば原油の強気相場は一気に吹き飛んでしまう。もしそうなれば今度こそ本当の「逆オイルショックの再来」となる。それはまさにファリハ氏が最も想定していない「ブラックスワン」だろう。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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