原油市場における「ブラックスワン」は何か?

サウジアラビアの減産はいつまで続くのか

2018.02.02(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52232
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 このように「シェールオイルの増産の影響はないほど、原油需要が増加する」と言い切るには無理がある。ファリハ氏もこのことは十分承知しているはずであって、シェールオイル増産の悪影響は想定外の事象を意味する「ブラックスワン」とはいえない。

苦境のサウジアラビアが原油増産?

 では、「ブラックスワン」とは何だろうか。

 ファリハ氏が発言した際には全く念頭になかっただろうが、筆者は「サウジアラビアが原油増産に追い込まれる事態が生ずる」ことではないかと考えている。

 財政が「火の車」となっているサウジアラビア政府は今年から5%の付加価値税を導入し、ガソリン価格への補助金を大幅カットする(価格は2倍に)などの措置を講じた。だが、これにより国民の不満が一層高まっている。

 サウジアラビアのジャドアン財務相はダボス会議の場で、「昨年11月に実施した大規模な汚職摘発で回収した現金などを、緊縮政策のしわ寄せを受けている国民に分配する方針を明言した(1月28日付CNN)。具体的には、すべての国家公務員(国民の7割を占める)に対して月額1000リヤル(約2.9万円)の手当てを1年間支給し、年1回の特別報奨金も交付する。さらに学生奨学金を10%増額し、兵士への報奨金や自宅購入者への優遇税制なども検討している。これらの措置の財源規模は約500億リヤル(1兆4500億円)とされている。

 サウジアラビア政府は、拘束している王族などが汚職行為で少なくとも1000億ドルの損失を与えているとして、釈放の条件として彼らの財産を没収する方針だ。検察当局は30日、汚職捜査で摘発した王族らが支払う「解決金」の総額が約12兆円を超えたことを明らかにしたが、ジャドアン財務相はCNNの取材に対して「これら容疑者の大半の資産は現金ではなく不動産などであり、清算するには時間を要する」と述べている。つまり、没収した財産を直ちにバラマキ財源に充当できる状況にはない。

 1月27日、拘束されている王族の中で最も資産家であるアルワリード王子(資産規模は180億ドル)がホテル「リッツ・カールトン」から釈放された。王子はロイターの取材に対し「拘束については誤解があった。罪には問われない。『60億ドルの解決金が要求された』との報道は誤りだ。自分が率いる投資会社キングダム・ホールディングを引き続き管理する見込みだ」と語った。一方、政府当局者によれば、アルワリード氏は「解決金」(金額は不明)の支払いに応じた後に釈放されたとしている(1月28日付日本経済新聞)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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