大勢の来客用から小人数分へ、煮豆の変化が映す世相

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(3)煮豆

2017.12.22(Fri) 三保谷 智子
筆者プロフィール&コラム概要

1回で食べきれる「黒豆100g」を煮る――平成3年

1991(平成3)年1月号おせち料理の特集から。100gの黒豆を煮るレシピ。小鍋で4時間煮るとあるが、水分の蒸発が心配。
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 時代は下って、カードではないが平成初期の黒豆をご紹介したい。1991(平成3)年1月号の特集は「おせち料理を『少量』作る。」。「おなじみおせち、『どこまで量を減らして作れるか?』」と冒険をした。

 結果、黒豆は4人分で100g(丹波黒豆で約130個)を煮るというもの。口径18cmの小鍋で作れるとしている。従来紹介してきたレシピの3分の1の量である。この号は、品切れの書店が出るほど読者に受け入れられたと記憶している。

 作り方は、煮汁を熱くして、そこに乾燥豆を浸して一晩置いてから煮るというもの。これは、砂糖を加えるタイミングが分かりにくい黒豆や大豆の煮方として手軽な方法である。鍋に砂糖(乾燥豆の50~80%)、しょうゆ(乾燥豆の1%塩分)と水を入れて、ひと煮立ちさせて火を消し、熱い中に黒豆を入れて一晩置く。つけ汁ごと強火にかけて沸騰したら、静かに煮立つ状態まで火を弱め、落しぶたをして4時間ほど煮る。調味料の分量をパーセントで示しているのは、豆の分量が変わっても応用が利くからだ。

 当時の編集長が綴った編集後記には「今年は元日の朝、家族が顔を合わせる最初の食卓――その1回分だけを作る、という発想で企画・構成してみました」とある。その後、私は2011年まで10年間、編集長を務めたが、おせち料理を特集として取り上げることは少なくなり、ページ数も減った。

 今、おせち料理を作る人はさらに減り続けているだろう。食事も衣類と同じように既製品で整うようになったが、だからこそ、お正月ぐらいは日本人の食文化を見直す機会にしたい。いずれ、乾物の豆を調理できる人がいなくなるのでは、と危惧している。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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