中国に奪われる可能性のある日本の食料

マッキンゼー「食料争奪時代」報告書を読む(前篇)

2017.12.08(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 実際、2008年には世界的な穀物価格高騰が起きたが、それまでに2006年のオーストラリアでの干ばつや投機マネーの急増、2007年のサブプライム住宅ローン危機の顕在化などの複合要因があったと、報告書は指摘する。

「政治的リスクとは、先ほどの中国の政策転換もそうですが、短期的あるいは突発的に起きる事象を指します」(同)。中国の食料輸入政策の転換のほかに山田氏が政治的リスクとして上げるのが、北朝鮮を含む東アジアでの紛争だ。

「東アジアで有事が起きたとき、東南アジアなどから輸入ルートが封鎖されて、砂糖の輸入が滞るような事態も想定されます。入手困難による値段の高騰も考えられます」

 もう1つ、「自然的リスクは、地球温暖化などが関与する長期的なリスクです」(同)。ただし、留意すべきは地球温暖化が進んだ場合、すべての国・地域が農業生産の面で“悪影響”を受けるわけではない、ということだ。

「高緯度の地域では温暖化が進むと凍土が溶けて、農業が可能な地帯が広がります。ロシアでは年間500万トンのトウモロコシ輸出国ですが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が掲げる2050年時点の温暖化シナリオでは10倍の5000万トンを輸出できるようになります。輸入国が輸出国に転じるカナダなどの例もあります。一方、米国やブラジルなどは、水不足や害虫病の発生などにより生産効率が悪くなると予測されます」(同)

グローバル食料争奪時代、日本の取るべき針路は?

 今回の報告書は、世界全体で見れば今後の食料需給は深刻に逼迫することはないという予測を示した。だが、「食料争奪」の時代を迎えるともいう。さらに「有事」も想定しておかなければならない。

 未来の食料安全保障に向けて、日本はどのような「針路」をとるべきなのか。後篇で、引き続き報告書を見ながら、山田氏に話を聞くことにする。

(後篇へ続く)

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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