中国に奪われる可能性のある日本の食料

マッキンゼー「食料争奪時代」報告書を読む(前篇)

2017.12.08(Fri) 漆原 次郎
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 トウモロコシが不足するリスクについては中国の動向がカギを握りそうだ。

「中国ではトウモロコシの消費量は2008年以降、年6%のペースで急増してきました。中国政府は、都市部への人口流入抑制策などから、農業者に補助金をあたえてトウモロコシなどの農業を維持させてきたため、生産量も消費量も伸びてきたのです。ところがもはや持続可能な状況とはいえず、中国はトウモロコシの輸入を本格化する兆しを見せています」

 中国の人口は約14億人。自給から輸入に転じると世界状況が一変する。「トウモロコシの自給率が100%から80%に変わった場合、計算上は米国が輸出している分の80%が中国に取られるということになります」(山田氏)

 日本が米国に頼ってきたトウモロコシを他国に奪われたら・・・。報告書では、2050年に日本で必要なトウモロコシ輸入量1250万トンに対し、約17%の210万トンが不足しうるとする「悲観的シナリオ」の予測を示している(下の図)。

日本のトウモロコシ輸入量の実績と「悲観的シナリオ」における予測。「『グローバル食料争奪時代』を見据えた日本の食料安全保障戦略の構築に向けて」より。
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複合危機、北朝鮮、温暖化・・・有事のリスクも

 報告書では「リスク」を、過去や現状から合理的に推定される「平時」のものと、平時の需給の増減予測から明らかに乖離する「有事」のものに分けている。たとえば、上述した小麦の例はおもに「平時」のリスクに含まれるが、トウモロコシの例は輸入国である中国の政策転換を要因とする「有事」のリスクに含まれる。

 この「有事」のリスクを、報告書ではより詳しく「循環的リスク」「政治的リスク」「自然的リスク」に分けている。それぞれについて山田氏が説明する。

「循環的リスクとは、10年に一度くらいの経済サイクルで生じる食料危機のこと。このくらいのスパンで食料危機や、その要因の1つとなる金融危機が生じます」(山田氏)。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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