中国に奪われる可能性のある日本の食料

マッキンゼー「食料争奪時代」報告書を読む(前篇)

2017.12.08(Fri) 漆原 次郎
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 農水省が公表する「食料・農業・農村基本計画」では、「国内生産のみでどれだけの食料を最大限生産することが可能か」を示した「食料自給力」が示されている。これは、花の栽培などに使われている農地までも食用作物の栽培に充てたときの最大生産力を示したものだ。

 戦時中のように、いも類を中心にカロリー効率を最大化するパターンであれば、1人・1日あたりの総供給熱量の目安2424キロカロリーをどうにか超える。だが、いまの生活に近い、栄養バランスを一定考慮して米、小麦、大豆を中心に栽培するパターンでは1495キロカロリーにしかならない。

 マッキンゼーの報告書は、<現状の嗜好・多様性を満たす食生活を維持していくには、国内生産だけでは農地総量やコストの面から困難である>として、輸入の必要性を強調する。

高リスクな作物は小麦とトウモロコシ

 主要な食料材料の中でも、小麦と飼料用トウモロコシは、日本の食料安全保障のうえではリスクの高い要素となるようだ。小麦の国内自給率は熱量ベースで2015年では15%、2016年では12%(概算)と低い。また、トウモロコシが半分ほどを占める濃厚飼料*1の自給率は、数量ベースで2015年では14%にとどまっている。それぞれの現状はどうか。

*1=デンプンやタンパク質含量が高く栄養価が高いエサで、一般的にはトウモロコシ、ぬか類、大豆や大豆粕(かす)、綿実などを混ぜ合わせた混合飼料が使われる。

 まず、小麦については、日本は輸入面でほぼ米国、カナダ、オーストラリアに頼っている。だが、これらの国が小麦の輸出先を日本以外の国にシフトするおそれがあるという。

「メキシコ、フィリピン、インドネシアやナイジェリアなどでは今後、国が豊かになるに伴い、西洋食文化が根付き、パン食や菓子食の消費量が伸びていくと予測されているのです。日本が小麦の輸入量を確保できるのかは重要になってきます」(山田氏)

 報告書では、米国、カナダ、オーストラリアの輸出先の変化を考慮に入れた「悲観的シナリオ」を示し、日本の小麦不足のリスクを表している(下の図)。2030年には輸入量の約25%にあたる140万トンが不足し、2050年には約59%にあたる300万トンが不足しうるという。

日本の小麦輸入量の実績と「悲観的シナリオ」における予測。「『グローバル食料争奪時代』を見据えた日本の食料安全保障戦略の構築に向けて」より。
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(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51791

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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