米国がサウジアラビアを見捨てる日

ロシアとの歴史的和解が米国の虎の尾を踏んだ?

2017.10.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51319
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米国に背いてロシアから防空システム購入

 サウジアラビアとロシアの間では、「原油価格安定のための協調」の他、2国間の経済協力の拡大について様々な取り決めがなされた。中でも武器取引に関する合意、すなわちサウジアラビアがロシアからS-400防空システムを購入することに世界の関心が集まった。

 S-400防空システムの射程距離は米パトリオットミサイルシステムの2倍以上を誇り、400キロメートル先の6つの目標を同時に処理する能力を有するとされている。サウジアラビアは中国、インド、トルコに続いて4番目の供給国になる可能性が高い(4つのS-400防空システムの購入額は約20億ドル)。

 しかし、サウジアラビアのS-400防空システム購入に対して、米国防総省は、米国による湾岸地域のミサイル防衛網の構築に齟齬をきたす恐れがあることから、懸念の意を表明した(10月6日付露スプートニク)。

 長年の同盟国である米国の意向に背いてまでS-400防空システムの購入にサウジアラビア政府が踏み切った理由として、ロシア側が同システムに関する技術移転と現地生産を認めたことが挙げられている。「ビジョン2030」(ムハンマド皇太子が主導する経済改革)の主要目標の1つ「国内軍需産業の育成とそれによる雇用の創出」の達成に向けて大きな追い風となることから、ムハンマド皇太子にとって極めて魅力的な取引であったことが想像できる。

 今年5月にトランプ大統領がサウジアラビアを訪問した際、サウジアラビア政府は米国史上最大規模となる1097億ドルの武器購入に合意した。ロシアからの防空システム購入の報を受けるやいなや、米国務省は5月の武器合意の一部である地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の売却(総額150億ドル)を決定した。

 それでもロシアからの武器購入を決定した背景には、欧米諸国の中東地域への影響力低下に加え、人道問題などを理由に武器移転を躊躇する欧米諸国への不信があるのだろう(10月5日、国連はイエメンで戦闘を行っているサウジアラビア主導の有志連合を「子供たちを殺害している」としてブラックリストに追加した)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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