米国がサウジアラビアを見捨てる日

ロシアとの歴史的和解が米国の虎の尾を踏んだ?

2017.10.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51319
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 最近まで原油価格の先行きについて強気だったヘッジファンドをはじめとする投資家の間では、再び弱気モードが生じつつある(10月9日付ZeroHedge)。独立系石油商社であるトラフィギュラは9月末に「軟調な原油価格が続き時期は需要拡大と供給縮小で終わりを迎えつつある」との見解を示していた(9月26日付ブルームバーグ)。これに対し同業他社であるビトルのテイラーCEOは10月5日の英王立国際問題研究所のイベントで「世界的に電気自動車への移行など化石燃料離れが加速していることから石油業界は衰退していく」「原油需要は2028~2030年頃にピークを迎える」という極めて悲観的な見方を示した。

サウジとロシアが減産延長について協議

 このような情勢の中で足元の原油市場は「OPECをはじめとする主要産油国の減産が来年3月以降も延長されるかどうか」に関心が集中している。現在の原油価格の水準には減産延長の決定が織り込まれている。そのため、11月のOPEC総会で減産延長が決定されなければ原油価格が大幅に下落するリスクが生じている。

 OPECのバルキンド事務局長は10月8日、「産油国は供給過剰気味の市場を再び需給均衡へ向かわせることに成功しつつあるが、この回復を来年も維持していくにはさらなる措置が必要となる可能性がある」として、来年3月までの減産合意の延長について協議を行っているサウジアラビアとロシアの両国首脳の直接対話に期待感を示した。

 10月4日夜、サウジアラビアのサルマン国王はロシアを訪問した。サウジアラビア国王がロシアを訪問するのは歴史上初めてである。プーチン大統領がサルマン国王との会談の前に「主要産油国の減産合意は2018年末まで延長される可能性がある」と示唆すると、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「合意があれば2018年末まで減産を延長する準備がある」と前向きに応じた。そして5日、サルマン国王とプーチン大統領は会談し、「世界の原油市場の安定に向けロシアとの協力を継続する」と表明した。

 サウジアラムコ(サウジアラビアの国営石油会社)上場の成功を悲願とするサウジアラビア政府は、原油価格の上昇のために、世界の原油市場における同国のシェアが縮小しようが、今年の上半期の経済成長率がマイナスになろうがお構いなしに、合意された原油の減産をひたすら遵守している(国の政策に経営が左右される国益会社の上場を制限している米国の反トラスト法の抵触を避けるため、サウジアラビアはOPECから離脱するのではないかとの憶測もある)。IMFは10月5日、サウジアラビア政府に対し「改革を闇雲に急ぐべきではない」との異例の声明を出したが、サウジアラビア政府は11月の原油輸出量を前年に比べ日量平均56万バレル削減し同715万バレルにすることを決定するなどその姿勢を変えていない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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