米国社会の混乱が原油価格の下落を招く

「第2次南北戦争」の懸念が広がる

2017.09.01(金) 藤 和彦
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米ヒューストンに夜間外出禁止令、「ハービー」直撃で大洪水

大型ハリケーン「ハービー」が直撃し洪水に見舞われた米テキサス州ヒューストンで、避難する人々(2017年8月29日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News

8月28日の米WTI原油先物価格は1バレル=46.57ドルと約1カ月ぶりの安値となった(その後「原油在庫減少」の統計結果が出たが、「ハービー」の被害が拡大するとの観測から原油価格は同45ドル台に続落した)。

 8月に入ってから米国の原油在庫が順調に減少を続けたことが原油価格を下支えしてきた。だが、ハリケーン「ハービー」が25日にテキサス州に上陸したことで製油所の一部が操業停止となり、製油できない原油在庫が今後増加に転じるとの懸念が生じたからである。

 25日深夜に「ハービー」が上陸したことで米国第4の都市ヒューストン周辺は大洪水に見舞われた。テキサス州は27日、州兵3000人を派遣し数千人を救出したが、翌日に米連邦緊急事態管理局(FEMA)が「救援が必要な被災者は45万人以上にのぼる」との見通しを明らかにするなど、事態が収拾する兆しはない。約250の高速道路や空港、港湾施設が閉鎖され、沿岸部の油田地帯で操業する製油所も直撃を受けた(沿岸部の油田地帯は米国全体の製油能力の3分の1を占める。製油量は日量約560万バレル)。

 米石油最大手のエクソンモービルは27日、米国で2番目に大きなベイタウン製油所の操業を停止し、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルやブラジル国営石油(ペトロブラス)などの製油所もこれに続いた。こうして、米国全体の製油能力の約20%(日量約310万バレル超)が失われ、28日の米ガソリン先物価格は一時約2年ぶりの高値を付けた。

 テキサス州では、シェールオイルの産油地帯であるイーグルフォードで一部生産が停止するなど原油生産量も約2割減少している(日量約30万バレル超)。だが、原油の減少以上に製油量の減少幅が大きいことから、原油在庫が増加することを嫌気して、23日に若干上昇した原油価格は大幅に下落したのである。

 テキサス州では降雨が続いており、石油関連施設の復旧には最低でも1カ月以上かかるとされている。ゴールドマンサックスは28日、「今後数カ月にわたり原油在庫の大幅増加が続く可能性がある」との見解を示した。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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