原油市場を動かすのは地政学要因か、金融要因か

中東で高まる地政学リスク、市場ではリスクマネーが減少

2017.09.29(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51182
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原油市場の安定を阻害する要因

 このように中東地域の地政学リスクの高まりは原油価格の上昇要因となりつつあるが、地政学リスクが顕在化しない限り、産油国の政情不安解消などを通して原油市場は安定に向かうとみられる。だが「そうは問屋が卸さない」かもしれない。阻害要因をいくつか列挙してみよう。

・ 米FRBが10月から保有資産の縮小を開始する。リーマンショック後の経済を立て直すためにFRBは米国債やMBSを大量に購入したが、その結果、余剰マネーが原油市場に大量に流入したために、2011年以降原油価格は1バレル=100ドルを超える、いわゆる「不景気の下での原油高」の状態となった。その後、2014年10月にFRBが量的緩和を終了させると原油価格は下落し始め、同年11月のOPEC総会が減産を見送ると原油価格は同40ドル台に急落した。シェールオイルの増産と需要の低迷で世界の原油市場は2014年初め頃から既に供給過剰状態となっていた(筆者は「逆オイルショックが来る」と懸念していた)が、原油価格が急落するまで市場関係者はそのことに気がつかなかったという経緯がある。

・ 世界の原油需要を牽引してきた中国の失速懸念が生じている(前回のコラム「ハリケーンよりも深刻な中国の原油需要の低迷」を参照)。中国政府は「石油精製産業を設備過剰対策の次のターゲットにする」との方針を明らかにするとともに、世界の原油市場へのリスクマネーを提供するようになった国内の商品先物取引に対する規制を強化している。

・ 「原油需要のピークが近い」との声が日増しに高まっている。「ガソリン需要に代わってプラスチック需要が世界の原油需要をリードする」との指摘もあるが、地球環境問題への意識の高まりを考えればナンセンスな議論である(9月13日付OILPRICE)。

・ 11月のOPEC総会では、ロシアが「来年1月以降に再び協議することが可能だ」としていることから、減産延長の決定が先送りされる可能性が高い。

 地政学リスクが顕在化しない限り原油価格は大幅に上昇しない一方、リスクマネーの減少などで原油価格が再び急落する可能性も排除できない。原油価格の緩やかな上昇がすべての関係者にとってハッピーであることは言うまでもないが、それを実現できるほど「市場」は器用ではないのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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