原油価格急落の原因を作ったサウジアラビア副皇太子

協調減産の延長でもなくならない下押し圧力、価格上昇に望みはあるか

2017.05.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49973
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 ムハンマド副皇太子は国営テレビのインタビューの中で「サウジアラビア政府が予算の前提としている原油価格の想定シナリオは1バレル=55~45ドルである」と語った。市場ではその発言を受けて「サウジアラビアは原油価格上昇に対する熱意は強くない」との見方が広がり、原油価格は昨年末の主要産油国の減産合意以前の水準にまで下落していた。

 悪化したセンチメントにCTAが反応し、その後、原油に特化した大口ヘッジファンド(ピエール・アンデュランドが運営)が原油先物市場における買いポジションをすべて解消したという流れである(5月5日付「ZeroHedge」)。

 原油先物市場では「6月中旬の原油価格を1バレル=39ドルとする」オプション取引が急増し(5月6日付「ブルームバーグ」)、「OPECに対する期待プレミアムで原油価格は10ドル上乗せされていた」との見方も出ている(5月8日付「OilPrice」)。今後、原油価格に対する下押し圧力はしばらく続く可能性が高い。

イランへの不信感もあらわに

 ムハンマド副皇太子は国営テレビのインタビューで、対立するイランとの関係についても言及している。イランに対する強硬な姿勢は相変わらずだ。「極端な思想の上に成り立っている体制や人物とどうやって理解し合えるのか」と対話の意味はないとの考えを示し、「イランはイスラム世界を支配しようとしている。我々はその主要な標的となっている」と不信感をあらわにした。

 イランは5月に入り、6月以降の減産に前向きな姿勢を示し始めているが、ムハンマド副皇太子の発言について「サウジアラビアこそ地域に脅威を振りまき、危険な野心を持つ挑発者である」と猛反発している。

 昨年4月のドーハ会合は、ムハンマド副皇太子がイランに対する特別扱いを拒否したため決裂した。5月25日に開かれるOPEC総会がドーハ会合の「二の舞」にならないことを祈るばかりである。

サウド王家内で権力闘争が激化?

 ムハンマド副皇太子の一連の発言は、ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相の昨年夏以降現在に至るまでの努力に「水を差している」としか思えない。苛立ちともとれる彼の発言は、自身が進めるサウジアラビア経済の「脱石油化」が保守派の強硬な抵抗に遭い、遅々として進んでいないことの表れではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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