原油価格急落の原因を作ったサウジアラビア副皇太子

協調減産の延長でもなくならない下押し圧力、価格上昇に望みはあるか

2017.05.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49973
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 サウジアラビアでは、王家内の新たな「火種」となりそうな動きもあった。

 4月22日、サルマン国王は州知事・閣僚などの人事異動を行った。この人事でサルマン国王の息子2人が昇進したことに注目が集まっている。

 1人目はエネルギー担当国務相に就任したアブドラアジズである。彼はサルマン国王の第1夫人の長男であり、長年エネルギー産業鉱物資源省に務めていた。今回の昇進で経済・開発協議会議長であるムハンマド副皇太子氏とともに、エネルギー問題に関するサルマン家の関与が一層強まると言われている。

 そして2人目は駐米大使に任命されたハリドである。彼はムハンマド副皇太子の同母(第3夫人)弟であり、年齢は20代後半である。空軍アカデミーで学位を取った後パイロットとなり、2014年の米軍主導によるシリアでの対IS(イスラム国)空爆に参加したことで知られている。

 サウジアラビアの対米関係については、ナイフ皇太子(サルマン国王の甥)がジュベイル外相とともに強い権限を握っている。しかし今回の人事でムハンマド副皇太子の実弟を米国大使に据えることにより、米国との関係についても主導権を奪還しようとしているとの観測がある。

 サルマン国王は就任早々、寵愛するムハンマドを国防相、経済・開発協議会議長、副皇太子に就けるなど異例の厚遇をしてきたが、今回の人事異動でサルマン家への権限の集中が進んだことから「今後、サウド王家内で権力闘争が激化する」との懸念が生じている(5月3日付「OilPrice」)。

 ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相のおかげで、原油価格が1バレル=50ドル台で安定していた4月までは国内の不満は表面化してこなかった。しかし、原油価格が40ドル割れにする事態になれば、王家をはじめ国内全体からサルマン家に対する非難が高まるのは必至である。

 そうした状況の中でのムハンマド副皇太子の言動は、自らを苦境に陥れる愚行と言っても過言ではない。サウジアラビアでは、彼の暴走を止める者がますますいなくなってしまったのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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