原油価格急落の原因を作ったサウジアラビア副皇太子

協調減産の延長でもなくならない下押し圧力、価格上昇に望みはあるか

2017.05.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49973
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 一方、シェールオイルの増産傾向は止まらない。米石油サービス大手ベーカーヒューズが5月5日に発表した石油掘削装置(リグ)稼働数は前週比6基増の703基と16週連続で増加となった。700基回復は2015年4月以来約2年ぶりである。

 米国の原油生産が増加する中でガソリン需要が低迷すれば、ガソリン在庫の増加が再び原油在庫の増加をもたらすことになる。

 原油在庫を大きく左右する中国の原油需要にも関心が集まり始めている。

 中国は3月の原油輸入量が日量平均917万バレルとなり、世界一の原油輸入国となった。だが、4月の原油輸入量は前月比9%減の同837万バレルである。3月に原油輸入を政府から許可された民間製油所(茶壺)の輸入枠が4月に入り早くも上限に達してしまったことがその要因とされている。中国の原油輸入増を牽引してきた茶壺の輸入需要が消滅すれば、世界の原油在庫は再び増勢に転じる可能性がある。

ムハンマド副皇太子の発言に市場が失望

 原油市場は5月に入って急激に弱気相場になった観が強いが、最もインパクトが大きかったのは、5月4日のWTI原油先物価格が正午近くの十数分の間で1バレル=45ドル台から43ドル台に急落したことである。

 ゴールドマンサックスは「基礎的な統計などはなく持ち高調整が下落を加速した」と指摘しているが、引き金となったのは前回のコラム(「朝鮮半島危機は原油価格にどう影響するのか」)で紹介したCTA(商品投資顧問会社)の「売り」のようである。CTAとは商品先物市場に投資し、金融工学に基づいたプログラムに従いロボットが24時間体制で売買するファンドの一種だ。CTAの売りが2014年後半の原油価格の暴落を招いたとの認識があるため、4日の急激な「下げ」は関係者に2014年の相場急落の悪夢を甦らせたのである。

 CTAのアルゴリズムが何に反応したのかは定かでないが、5月2日の原油価格は、サウジアラビアのムハンマド副皇太子の発言への失望から既に1バレル=47ドル台に下落していた(5月2日付「ZeroHedge」)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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