体重の大小よりも“体の中身”が問題だ

「太れない」「痩せられない」の科学(前篇)

2017.02.10(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

腸から心に至るまでの個人差も要因に

――仮に、同じ性別、年齢、身長、体重の2人が、同じ量と種類の食べものを摂り、同じ生活の仕方をしていたら、太り方あるいは痩せ方は同じになりますか。

鷲澤尚宏(わしざわなおひろ)氏。東邦大学医療センター大森病院栄養治療センター部長。医学部臨床支援室教授。医学博士。1986年、東邦大学医学部卒業。専門は消化器外科、栄養支援。医師、看護師、薬剤師、栄養士などによる栄養サポートチーム(NST)のあり方を含め、入院患者に最良の栄養療法を提供するための方法なども検討している。

鷲澤 いいえ。違ってきます。体の機能も「太れない」「痩せられない」に関わっていて、人それぞれ異なるからです。多くの人は「消化吸収がよい」といった話を食べものに当てはめがちですが、その機能を果たすのは体の方であり、個人差があるということです。

――体のどんな機能が「太れない」「痩せられない」に関わってきますか。

鷲澤 まず、内臓の消化吸収の機能です。極端な例では、胃を摘出した人は、外見ではそれが分かりませんが、胃がある人とでは消化吸収の能力は違います。

 また、食べものから摂り入れた物質を、脂肪やエネルギーとして体に蓄積するための代謝を行う臓器、たとえば肝臓などの機能も、個人差が大きく影響します。

 それらの上層部では、新陳代謝を促進するホルモンを出す甲状腺や、血糖値を上昇させるホルモンなどを出す副腎などの、ホルモン分泌に関わる臓器もあります。そのまた上層部では、自律神経を制御する仕組みがあります。これらの機能も人により異なります。

 さらに、神経に作用する心の状態も人それぞれです。心配事ばかりで、いつもどきどきしているような人は、なかなか太れないということです。

――「太れない」「痩せられない」は、生活習慣と遺伝と両方に関わってくるわけですね。

鷲澤 ええ。生活環境が変わったら太れるようになったというのは、明らかに生活習慣による影響です。一方、代謝に関わる細胞に働く遺伝子なども見つかっており、遺伝の影響があるのも確かです。

 ただし、生活習慣の影響と遺伝の影響をきれいに分けることはできません。親子で暮らしてきて食習慣が受け継がれたというのも、ある意味「遺伝」と言えますから。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。