2017年前半の原油市場を最も左右するのは米国

サウジアラビアでは「お家騒動」の懸念も

2017.01.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48891
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 筆者が注目しているのは米エネルギー省が1月5日に発表した2017年版展望レポートである。それによれば「天然ガスの輸出増加と石油製品の輸入減少を理由に、米国が2026年までにエネルギーの純輸出国に転じる」との見通しを示している。

 米国は1953年以降、エネルギーの純輸入国の状況にあったが、シェール革命により2015年後半から原油輸出が開始され、2016年にはアラスカ州を除く米国本土からの天然ガスの輸出が始まるなど、エネルギーの輸出量が拡大している。原油と天然ガスをトータルで見ると、エネルギー価格が高めに推移すれば2017年頃、低めに推移すれば2026年頃に純輸出国になるという。

 このような状況を踏まえ、米エネルギー省は戦略国家備蓄制度(SPR)の取り崩しを決定し、「今年前半に800万バレルの原油を市場に売却する」ことを通知している。“今後、米国内のエネルギー需要はあまり伸びない一方、エネルギー生産コストの低減が見込まれる”との前提に基づく予測である。

 だが、果たしてその前提通りになるだろうか。

 昨年の価格の値下がりで、米国のガソリン需要は過去最高を更新した。だが、「ガソリン需要はピークを打った」との見方が強まっており、2040年までのエネルギー需要の伸びが低位で推移するとの予測もある。

 エネルギー生産コストについても、シェール企業の生産性上昇が喧伝されているものの、大半のシェール企業が赤字操業を余儀なくされている状況に変わりはない。金融機関はシェール企業への融資に前向きになってきているが、シェール企業の大手は今年も引き続き投資には慎重な姿勢を崩していない(2016年12月29日付ブルームバーグ)。さらに、生産性の高い油田を中心に採掘してきた反動で、今後シェールオイルの生産性が下がる可能性があり、「生産コストの低減」予測は鵜呑みにはできない。

 しかし、このタイミングでレポートが公表された政治的なインプリケーションは大きい。北米圏(米国・カナダ・メキシコ)の原油生産量の合計は世界の4分の1弱(約22%)を占めており、カナダから米国へのエネルギー供給が増加すれば中東依存度はますます下がることになる。「『エネルギー自立』いう目標は手が届くところまで来た」との認識が米国内に広まるのは想像に難くないからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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