2017年前半の原油市場を最も左右するのは米国

サウジアラビアでは「お家騒動」の懸念も

2017.01.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48891
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懸念されるサウジの「お家騒動」

 サウジアラビアに目を転じると、ムハンマド副皇太子の立場が一層危うくなっている。

 まず指摘したいのは、原油価格が1バレル=50ドル台に回復したことでムハンマド副皇太子が提唱する「ビジョン2030」に対するモメンタムが国内で急速にしぼんでしまったことである(1月5日付ビジネス・インサイダー)。

 米国内の反サウジアラビアの動き(テロ支援者制裁法の成立など)もあって、改革の目玉であるサウジアラムコの株式公開に対する王族内の反対の動きが高まり、ムハンマド皇太子の「経済の脱石油化」の大方針が大きく揺らいでいる。

 外交面の影響力にも陰りが出ているようだ。昨年1月、ムハンマド副皇太子が主導してイランとの国交断絶を行ったとされているが、イランの外交姿勢が変わらないにもかかわらずサウジアラビアから関係修復の動きが出ているからだ。

 一例を挙げれば、昨年12月30日、サウジアラビアの巡礼大臣は「サウジアラビアは、イラン人が2017年の巡礼に参加できるように準備を整えるため、イランの責任者に対して会合に出席するよう呼びかけている」と述べた。イラン人のメッカ巡礼が2年ぶりに復活すれば、両国間の関係は大きく改善されるだろう。

 一方、ムハンマド副皇太子が決定を下したイエメンへの軍事介入への批判は高まるばかりである。英インデペンデント(1月7日付)は「サウジアラビアの政策は中東地域の危機の要因だ」と報じ、その中で「イエメンに対するサウジアラビアの1年以上にわたる攻撃によってイエメンの総人口(2500万人超)の6割が十分な水や食料を得られなくなっている」とサウジアラビア政府を激しく非難している。

 サルマン国王は「愛する我が子(ムハンマド副皇太子)を国王にしたい」と願っているが、ムハンマド副皇太子は期待に応えられていない。今後、原油価格が再び下落し、米国のサウジアラビア離れが鮮明となれば、サウド家始まって以来の「お家騒動」が起きるかもしれない。

 今年の原油市場を巡る諸環境はますます荒れ模様になると筆者は憂慮している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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