2014年、ロシアのエネルギー政策を読み解く

中国の拡張主義を警戒するプーチン大統領、日本との関係強化の可能性も

2013.12.31(火) 杉浦 敏広
    http://goo.gl/NHFZcr
  • 著者プロフィール&コラム概要

(3)ロシア・ウクライナ/天然ガス価格合意:

 リトアニア共和国の首都ビリニュスにて11月28~29日、第3回EU・東方パートナーシップサミットが開催された。ウクライナは2012年3月にEU加盟の1つ前の手続きとなる連合協定仮調印済みにて、今回のサミットにて連合協定正式調印を目指していたが、開催1週間前になり突然正式調印作業を中断、署名を断念した。

 断念した対価として、ロシア側がウクライナ側にどのような土産を用意できるのか注目されたが、12月17日に結論が出た。

 プーチン大統領とウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領はモスクワにて12月17日会談し、両国間の天然ガス価格問題を含む経済協力関係を協議。露側は対価として、約30%の天然ガス価格の値下げ(2014年第1四半期の天然ガス価格は268.50ドル/1000m3)と(ウクライナのユーロ債権を購入する形で)150億ドルの資金供与を約束。

 報道では、露が主導する関税同盟(露・ベラルーシ・カザフスタン参加)へのウクライナ加盟問題は協議されなかったと伝えられているが、これはヤヌコビッチ大統領のウクライナ国内での立場を考慮したうえでの発表であり、実際には協議されたものと推測する。

 ウクライナでは2015年初頭に大統領選挙が予定されている。与党側はウクライナ東側の工業地帯を政権基盤としており、歴史的にも露との関係が深い地域だが、ウクライナ西側の旧ポーランド領地域は野党支持者が多く、EUへの統合を希望している。

 このような歴史的、地理的背景の中で、ウクライナ現政権はロシアとの関係強化を選択したと言えるだろう。なお、今回約30%の値下げを断行した背景には、ウクライナが関税同盟に加盟すれば域内関税をゼロにして、常にこの水準の安いガスを輸入できることを示唆している、と筆者は考える。

(4)ロスネフチとエクソンモービル/西シベリアのタイトオイル探鉱開発合意:

 ロスネフチと米エクソンモービルは12月17日、西シベリア・バジェノフ層のシェールオイル探鉱開発を目指す合弁会社を設立することで合意・調印した。

 合弁会社の出資比率はロスネフチ51%、エクソンモービル49%となり、2015年末までに約3億ドルを投資して資源埋蔵量の調査を行い、その後開発に移行するかどうかを決定(最終投資決定)する予定。尚、西シベリアのシェールオイルの想定資源量は100億トンとも言われているが、全ては今後の探鉱結果次第となろう。

(5)北極圏ヤマルLNGプロジェクト/最終投資決定発表:

 日本を含む東南アジア市場を主眼としたロシアの新規LNG構想は、下記3構想が競合している。

◆ガスプロム/ウラジオストクLNG構想(500万トンx3トレーン)
◆ロスネフチ/極東LNG構想(500万トン):サハリン島   
◆ノバテック/ヤマルLNG構想(計1650万トン): 北極圏ヤマル半島

 ノバテックは2013年12月18日、上記3構想のうち、先陣を切ってヤマルLNG構想の最終投資決定を発表した。零下40度以下の場所にLNG工場が建設された前例はなく、技術的にもかなりチャレンジングなプロジェクトになるだろう。

 なお上記はすべて新規LNG工場建設構想だが、上記以外にガスプロムのサハリン島S-2/第3トレーン増設構想もあり、ガスプロムはこの増設構想も検討開始した。

6
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

Toshihiro Sugiura (公財)環日本海経済研究所共同研究員

1973年3月 大阪外国語大学ドイツ語学科卒

1973年4月 伊藤忠商事入社。 輸出鉄鋼部輸出鋼管課配属。ソ連邦向け大径鋼管輸出業務担当。 海外ロシア語研修受講後、モスクワ・サハリン・バクー駐在。 ソデコ(サハリン石油ガス開発)出向、サハリン事務所計7年間勤務。伊藤忠商事/アゼルバイジャン共和国バクー事務所6年8カ月勤務。

2011年4月 バクーより帰任。

2011年5月 (財)日本エネルギー経済研究所出向、研究主幹。2015年3月伊藤忠商事退職。現在、(公財)環日本海経済研究所共同研究員
 

ロシア

ロシアは日本の隣国にもかかわらず最も遠い国の1つでもあった。しかし両国間の経済関係が密接になる中で、ロシアを正しく知ることは不可避である。このコラムでは日本を代表するロシアの専門家が様々な角度からロシアと周辺国を鋭く斬る。

>>最新記事一覧へ