2014年、ロシアのエネルギー政策を読み解く

中国の拡張主義を警戒するプーチン大統領、日本との関係強化の可能性も

2013.12.31(火) 杉浦 敏広
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 しかしガスプロムにはこのプロジェクトを実現する資金はなく、中国側から前金を受領するか、税金投入が必要になる。一方、チャヤンダ・ガス田を開発しないと、プーチン大統領の「東方政策」は実現しない。

 この意味で、2014年2月までに本当に露・中間の天然ガスP/L供給交渉が合意に達するのかどうかが、ロシアの東シベリア・極東発展にとって最大の注目点となるだろう。 

日本の対露エネルギー戦略

 日本はエネルギー消費国であり、エネルギー資源に乏しい国である。一方、隣接するロシア極東では既にサハリン1・2プロジェクトが稼働しており、原油と天然ガス(LNG)を生産している。さらに、日本の民間会社による各種新規構想も進行中である。

 このような現況にあり、自国エネルギー資源に乏しい日本のエネルギー戦略はいかにあるべきか?

 日本とロシアの関係において、エネルギー供給者としてのロシアと消費者としての日本は「相互補完関係」にある。両国がこの相互補完関係をより深く認識して、経済協力関係を強化することは両国の国益に適うものである。

 日本の世論では、ロシアは日本にとって信頼に足るエネルギー供給者になり得るのかどうかというような疑問や、「ロシアは信用できない」という論調がよく見られる。

 40年以上前の話だが、ソ連邦の西シベリアから西独向けに天然ガスP/L建設構想が浮上した時、西独国内では世論を二分する大論争が起こった。筆者はちょうどそのとき西独に留学中にて、その論争を目の当たりにした。

 賛成は西独産業界(主に鐵鋼業界)であったが、反対派(主に銀行筋)の主張はソ連邦から「赤いガス」を買ってバルブを閉められたらどうするのかというものであった。

 しかし過去40年間の長きにわたり、ソ連邦(ロシア連邦)が故意にバルブを閉めたことは一度もない(ウクライナ問題は別次元の問題)。

 もう1つ、実例を挙げる。戦後、旧ソ連邦最大の西側貿易相手国は西独であったが、西独とソ連邦の間には当時、平和条約は存在しなかった。現状、日露間には領土問題が存在するが、領土問題の存在を両国間の経済交流発展阻害の要因にしてはならない。

 日露エネルギー協力関係においては、ロシアから日本には石油・天然ガス(LNG)などの供給拡大、日本からロシアへは省エネ・環境関連技術の提供等々が考えられる。

 東シベリア探鉱・開発に対する積極的技術・財政支援により、対日石油・ガス安定供給が担保されることになるだろう。

 一見、「蜜月関係」を標榜する露中関係だが、プーチン大統領の東シベリア・極東開発構想の真意・背景は「隣国警戒感」にほかならない。

 東シベリア・極東を開発し、各種インフラ整備を促進、外資を積極的に導入し、ロシア人を極東に移住させ、対中防衛の防波堤とする。これがプーチン大統領の本音と筆者は理解する。

 日本にとっては、ロシアが東シベリア・極東開発に必要性を見出している今こそ、ロシアと協力して、東シベリア・極東における新規各種構想に参入する好機と言えよう。

 日本のエネルギー戦略の1つの支柱として、日露エネルギー協力を推進することは両国の国益に適うことであると筆者は確信している。

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Toshihiro Sugiura (公財)環日本海経済研究所共同研究員

1973年3月 大阪外国語大学ドイツ語学科卒

1973年4月 伊藤忠商事入社。 輸出鉄鋼部輸出鋼管課配属。ソ連邦向け大径鋼管輸出業務担当。 海外ロシア語研修受講後、モスクワ・サハリン・バクー駐在。 ソデコ(サハリン石油ガス開発)出向、サハリン事務所計7年間勤務。伊藤忠商事/アゼルバイジャン共和国バクー事務所6年8カ月勤務。

2011年4月 バクーより帰任。

2011年5月 (財)日本エネルギー経済研究所出向、研究主幹。2015年3月伊藤忠商事退職。現在、(公財)環日本海経済研究所共同研究員
 

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