マハティール 先にも申し上げましたが、放射性物質は一度活性化させてエネルギーを取り出すと、長い年月にもわたって放射能を出し続けます。これを抑えることはできない。そうである以上、私は原子力エネルギーは利用すべきでないと考えます。

 中国の場合には、環境への配慮が二の次、三の次となっています。経済発展が最優先ですから、一度建設してしまえば安定的に大きな電力を得られる原発への魅力を断ち切れないのでしょう。

日本はなぜ豊かな水資源を有効活用しないのか

「氷の国・華川ヤマメ祭り」農村体験プログラムで感じる人情の温かさ

日本には豊かな水資源がある〔AFPBB News

 しかし、日本は違いますよね。豊かな自然環境が大切な売り物の国ではありませんか。そして日本は小さな島国です。国民が肩を寄せ合うように暮らしている。

 そうしたなかで、福島のような事故が再び起きたら放射性物質で完全に汚染されてしまい、日本国民はそのなかで暮らさなければならなくなります。放射能は10年、20年でなくなってくれるものではありません。

 日本は中国と違うんです。中国は少なくとも日本よりずっと広い。日本に原発は本当に必要なのでしょうか。

川嶋 最後に中国の軍事的脅威についてお聞きしたいと思います。日本でも尖閣諸島の領有権を主張して軍事的な圧力をかけ始めました。南沙諸島を巡っては、ベトナムやフィリピンなどと武力衝突にさえ発展しています。

 軍事費を2ケタで拡大させ続けている中国についてはどのようにご覧になっていますか。

マハティール どんな国でも豊かになれば軍事力を増強したがります。中国だって例外ではありません。いままで中国は貧しくて軍事力増強に回すお金が十分になかった。

 しかし経済発展で豊かになり、軍事力を増強し始めたのです。いまやGDPで世界第2位の国となり、GDPの1%以上を軍事費に使うことができるようになった。その動きは止められません。拡大の一途をたどると思います。

 問題は、そうした動きに対して、これを止めようとして日本が動くことです。日本が中国の軍事力は脅威だとして中国を敵のように扱えば、そのことを米国は望んでいるのですが、中国は逆に軍事力増強を急ぐでしょう。

 中国を脅威として扱えば扱うほど、中国は軍事力を増強する。こうした軍拡競争からは何の利益も生まれません。