川嶋 仮想敵国という言葉があります。仮想の敵を念頭においてその国の侵略に備えるために軍事力を強化するために古くから使われているようです。しかし、いくら仮想でも敵国を念頭に置くと、必ず軍事力を増強させる力学が働き、最後は戦争に至る。それが歴史の教えですね。

軍備を拡大しても何の解決にもならない

マハティール その通りです。脅威だとか敵国扱いをしないこと。これが大切です。そうすれば軍事費に回す国家予算を節約できるし、相手も脅威を感じなくなる。

 日本だって中国の脅威を感じなくなれば軍事力を増強しようとはしないでしょう。できればほかにお金を使いたいはずです。

 しかし、米国は考えが全く違います。中国の軍事力は脅威だと言い続け、日本に対してはそれに対応すべきだとけしかけている。そして自らは第7艦隊を中国のすぐそばに派遣してくる。

 そんなことをすれば中国が脅威を感じないはずがありません。そして軍事力増強をしなければならないと思う。

 マレーシアもかつて米国から軍事力増強の圧力を受けました。しかし、私は全くそうは思っていない。だから断った。

 今日、ある国が(第2次世界大戦のような)戦争を起こすことは不可能でしょう。戦争である国を征服することはできるかもしれないが、その国を支配し続けることはできないのです。それが歴史の教えです。

 イラクとアフガニスタンで起きたことを見れば明白ですよね。それらの国では多くの人たちが亡くなりました。結果的に米国は何もすることができずに撤退するしかなかった。戦争は解決策には全くならないのです。

 日本はもう戦争はしたくないのでしょう。でも米国は日本に対して、何とかして自衛のための軍事力を増強させようとしている。そして湾岸地域にも自衛隊を派遣せよと圧力をかけている。

 そういう米国の口車に乗れば乗るほど中国を刺激するのだということを日本はしっかりと認識すべきです。中国は軍事力をますます増強するでしょう。そしてそれだけのことができる経済力をいま中国は手にしている。