マハティール もちろん国債の問題には真剣に取り組まなければなりません。国民や外国からお金を借りているのですから必ず返す必要がある。しかし、必ずしも増税が唯一の手段のように言うのは間違いです。ほかの方法がいくらでもあるでしょう。

 例えば、日本はマレーシアのように隣に貿易立国のシンガポールはないかもしれない。しかし、輸出大国の韓国がありますよね。韓国との競争を考えてみるべきではありませんか。

日本に必要なのは研究開発投資

ペトロナス・ツインタワーの夜景

 韓国を代表する企業にサムスン電子があります。サムスンと日本のソニーを比べてみたら、誰の目にも優劣ははっきりしています。サムスンは大変な利益を上げているのにソニーは大きな損失を計上している。

 なぜサムスンと同じようにできないのでしょうか。この問題を真剣に検討すべきではありませんか。

 日本はかつて非常に独創的な製品を生み出していました。「ウォークマン」しかりカラオケしかりです。しかし、いまの日本には独創的な製品を生み出す能力が劣ってしまったようにしか見えない。

 日本は力のある国です。もっとイノベーションができるはずです。イノベーションのためにもっとお金を使うべきです。研究開発投資はいまの日本に欠かせないと思います。

 こう言うと、十分にお金を使っていると反論されるかもしれません。しかし、いま日本は韓国と競争しなければならないのでしょう。その韓国は日本よりずっと研究開発に投資しているんですよ。

川嶋 日本は国も企業ももっとお金を使わなければダメだということですね。投資をしろと。

マハティール その通りです。以前、日本は「日本株式会社」と呼ばれていたでしょう。国と企業が密接に連携して産業を育てていった。日本はいつからそうした連携ができなくなってしまったのですか。

 もっと協力して新しいイノベーションを起こすべきです。

 民間企業は国家の一翼を担う重要な存在です。そうである以上、国が企業をバックアップすることは決して悪いことではない。