マハティール 例えば、以前、1ドルは3.8リンギットでしたが、いまは3リンギットです。80セントほど上がっています。マレーシアにとってこれは大きなインパクトがあります。しかし、日本の上昇率とは比べものになりませんね。

 とにかく、日本は米国の顔色ばかりうかがっていては豊かになれません。もっと日本自身のことを考えないと。

 米国は輸出競争力をつけたいので、日本に圧力をかけるでしょう。それに応えてばかりいたら円はますます上がり、日本製品の国際競争力はどんどん失われていきます。

欧米諸国は自分たちが貧乏になったことを理解していない

川嶋 2008年のリーマン・ショック以降の円高に関しては、通貨供給量の差が大きな原因だと言えます。米国や英国などがこぞって思い切った金融緩和に踏み切ったのに対して、日本は小幅にとどまりました。

 プラザ合意のときと今回は円高の意味合いが少し違うと思います。それにしても日本は自分たちの競争力を上げるという意志に欠けているのはおっしゃる通りだと思います。

 ところで、リーマン・ショックは世界に大きなインパクトを与えましたが、マレーシアやその他のアジアの国々にはどのような影響があったのでしょうか。

マハティール それは大きな影響があったと思っています。世界経済の変節点だったと言っていいかもしれません。

 欧州と米国はいまでも金持ちの国と考えているようですが、実際には彼らは貧乏な国になってしまっている。それが分かっていないから、自分たちに降りかかっている問題を解決できなくなっているのです。

 欧州の多くの国も米国も、もはやビジネスと呼べるものがほとんど失われてしまっています。残っているのは金融だけでしょう。

 金融機関は確かに一度に大きなお金を稼ぐことができるかもしれない。しかし、それは賭博のようなもので、新たな雇用も新ビジネスやサービスも生み出しません。人材もそれほど必要としないので、国として失業率は当然高止まりする。