マハティール 釈迦に説法かもしれませんが、GDPは大きく4つの要素から成り立っています。国内消費、政府支出、投資、そして貿易です。それぞれの国家が目指したい方向性に合わせて、これらの要素を一つひとつ丹念に研究する必要があります。

 例えば、消費を拡大させなければならないのであれば、消費税などの税金を上げるべきではありません。マレーシアや米国はこの方針で国家が運営されています。

日本には消費を拡大できる余地がまだいっぱいある

クアラルンプール最大のショッピング街パビリオンにある日本の店舗を集めた「トーキョーストリート」

 マレーシアのGDPのうち国内消費の割合は38%しかありません。これはもっと高めなければなりません。国民の消費意欲を高めてお金を使ってもらう必要があります。

 逆にGDPに占める割合が十分に高ければ、例えばGDP比で70%以上あるようなら、税金を課せばいい。でも日本はそこまでは高くないでしょう。

 私の見る限り、日本にはまだ消費できる余地がたくさんある。それなのに、GDPの大切な要素であるこの部分の税金を上げれば、間違いなく消費は落ち込み、日本のGDPは減少してしまうでしょう。

 日本の場合は、消費を刺激しながらムダな政府支出を抑える仕組みを考える必要があると思います。ただし、一方で、日本の将来のために政府支出も増やす必要もあります。政府支出はGDPの大切な要素の1つですから。

 政府支出の中でインフラの整備はとりわけ重要です。これは新しい産業を育て、ヒト、モノ、カネの流れを加速させます。政府支出の効果だけでなく、そうした副次的な効果によってGDPの増加に大きく貢献するのです。

川嶋 確かに、日本はバブル崩壊以後、インフラ整備に使う支出を大きく減らしてきました。元気のなくなった日本経済はそこにも大きな原因があると思います。

 日本の公共投資で言えば、ほとんど車の走らない農道などはムダとしても、慢性的に大渋滞の起きている道路などへの投資も必要でしょうし、住宅事情など改良すべき点はたくさんあります。

 私の友人が唱えている「高速道路の無料化」なども効果が大きいと思っています。しかし、日本の政府は大胆な景気刺激には消極的です。その理由は、膨れ上がって手に負えなくなった国の借金にあります。