伝統企業ゆえの同質性と硬直性に阻まれながらも、揺るぎない変革への意志で低迷していた味の素をV字回復へと導いた福士博司氏。どのような戦略によって「規模の拡大」から「収益力強化」への転換を図ったのか。
前編に続き、2024年4月に著書『会社を変えるということ』(ダイヤモンド社)を出版した同氏に、頓挫することなく変革を進めるための考え方や付加価値の高いイノベーション商品を開発する秘訣、企業DNAを見出すことの意味について聞いた。(後編/全2回)
■【前編】追い込まれた伝統企業はこうして甦った 味の素元副社長・福士博司氏が語る「脱・分派経営」の極意
■【後編】「強み」だけでは勝ち残れない 味の素元副社長・福士博司氏が語る、価値創造の鍵を握る「DNA」の見極め方 ※本稿
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「7分割法」でリボンをねじるように同志を増やす
――前編では、かつての味の素に見られた日本の伝統企業に共通する問題点と、経営レベルで見た企業変革のポイントについて聞きました。後編では、変革の具体的な中身について尋ねたいと思います。会社を変えるには、一気に変えようとするのではなく、リボンをねじるように進めることが肝心だと本で書いていますね。
福士博司氏(以下敬称略) リボンをねじると、表の面積が徐々に小さくなって点になり、そこから徐々に裏面が大きくなってやがて表と裏が逆転しますよね。変革はそのイメージで進めるべきです。これを実践する上では、プロジェクトをスムーズに進めるための戦略である「7分割法」が有効です。
物事を進めるには、人を説得する必要があります。その際、一度に大勢を説得しようとすると、反発を生んで失敗してしまうのです。そこで、目標達成に必要なプロセスを7つに分け、最初のステップでは全体の7分の1である15%、第2ステップでは約30%、第3ステップでは45%というように、段階的に説得する人数を増やしていきます。
経験上、3割を味方につける第2ポイントがTipping Point(転換点)になります。リボンをねじったときに、表面から裏面へ切り替わる「点」になるところです。例えば、10人が参加する会議で3人が同調すれば、場の雰囲気は大きく変わります。ここを超えると、第3ステップでは半数を味方につけたも同然ですから、ゴールに大きく近づきます。
7分割法の要諦は、各ステージのステークホルダーを見定め、説得する戦略をしっかり練ることです。誰がどういう責任を持っているのか、その相手に対してどういうロジックで説得するのか。この辺りの詰めが甘いと、早い段階で頓挫してしまいます。
もちろん、第1ステップをクリアしなければ何も動きませんから、まずは説得すべき相手を的確に見定め、何をすれば承諾してくれるかをとことん考え抜くことが必要です。