ChatGPTをはじめ、世界にさまざまな衝撃を与えている生成AI。すでに業務やサービスへの実装が始まっており、今やその活用が経営のトップアジェンダになりつつある。生成AIの導入にあたり、事業や組織をどう変革していけば、生き残ることができるのか。本連載では、生成AIが巻き起こす市場の大変化とその対応策を経営者目線で解説した『AIドリブン経営 人を活かしてDXを加速する』(須藤憲司著/日経BP、日本経済新聞発行)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第1回は、DXの進展がもたらす業務の変化とその影響を概観する。
<連載ラインアップ>
■第1回 DX推進によって、なぜリクルートのP/L構造は大きく変化したのか?(本稿)
■第2回 「現代のアインシュタインやダ・ヴィンチを手助けする」エヌビディアCEOの発言の真意とは?
■第3回 「じゃらんnet」はAI機能を搭載し、「顧客の悩み」をどう解消したのか?
■第4回 実例で解説、Salesforce、EvenUP、Notta…先進企業のAI活用戦略とは?(8月27日公開)
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■ DXは次のフェーズへ
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタルを活用して、圧倒的かつ優れた顧客体験を提供し、事業を成長させること」です。ここでの「成長」とは、「稼ぐ」「儲ける」と言い換えてもいいでしょう。
そもそもなぜDXが重要視されるようになったのでしょうか。
その背景の1つには、法人内でのスマホやタブレットの普及とSaaS(Software as a Service の略で、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービスのこと)の浸透があります。業務プロセスそのものもDX化しなければ、生産性を高められず、企業は生き残れません。
さらには、GAFA(アルファベット傘下のグーグル、アマゾンドットコム、フェイスブック、アップル)やBATH(百度〔バイドゥ〕、アリババ集団、騰訊控股〔テンセント〕、華為技術〔ファーウェイ〕)と呼ばれる巨大プラットフォーム企業の異業種への参入も挙げられます。
そういった勢いのある企業群がデジタルを最大限活用し、自社や自分たちの産業に全く新しい競争原理を持ち込むことで、破壊(ディスラプト)されてしまうかもしれないという危機感も背景にありました。
これらに加え、新型コロナウイルスの世界的蔓延も後押ししました。対面で人と会うこともままならない中で、DXはコロナ禍によって大きく推進せざるを得ない状況になりました。経営者は否が応でもリモートワークやビデオ会議といった働き方の変化や、非対面・非接触を前提とした事業継続を余儀なくされました。
デジタルをフル活用し、稼ぎ、顧客体験を変えることが求められるようになったのです。そして現在、コロナ禍を経て、DXは次なるフェーズを迎えています。すなわち「顧客体験=UX(ユーザーエクスペリエンス)」と「業務プロセス=DX」が直結する時代の到来です。
■ AIにより加速するDX
「顧客体験=UX」と「業務プロセス=DX」が直結するとはどういうことでしょうか。オンライン販売を行う小売メーカーを例に、説明していきましょう。下の図を見ていただきたいのですが、オンライン販売の流れとして、①流入(商品検索)②獲得(申込/購買)③顧客情報管理(CRM)④オフライン(コールセンター/営業/契約)となっています。
①〜③が「顧客体験」、④が「業務プロセス」です。
まず、「顧客体験」を細かく見ていきましょう。例えばGalileo AI(ガリレオAI)を使えば、申込・購買ページのUI(ユーザーインターフェース)のモック(サンプル)をAIが制作してくれます。そのデザインは、そのままFigma(フィグマ)などで編集して使うことができます。