兼松 代表取締役社長の宮部 佳也氏(撮影:宮崎訓幸)

 2021年に兼松の社長に就任した宮部佳也氏は、「世界が変化する時、商社のビジネスはチャンス」だと話す。2024年4月に発表された同社の中期経営計画では、顧客企業が直面するサプライチェーンの再構築、デジタル化、環境対応などの解決を支援する、独自の事業計画を打ち出している。宮部氏に次の3年を勝ち抜く戦略の要諦を聞いた。

特集・シリーズ
我が社の戦略

企業の成長に向けた指針となる中期経営計画。そこには、各社が直面する経営課題と、それを解決するために練り込まれた戦略が描き出されています。本シリーズでは、各社の経営トップや経営企画担当役員などへのインタビューにより、各社の描く戦略の“真の狙い”や中計に込めた“意志”を活写します。 

記事一覧

サプライチェーンの見直しで、商社の真価が問われている

――宮部さんが社長に就任されたのは、コロナ禍の真っ只中だった2021年です。それから3年が経ち、コロナも収束しましたが、事業環境に変化を感じていますか。

宮部佳也/兼松株式会社 代表取締役 社長

東京都出身。1982年南カリフォルニア大学土木工学部を卒業。83年に兼松江商(現兼松)に入社し、電子部品やバイク・自動車部品のトレーディングに従事。2度のシカゴ駐在、電子機器部長を経て、2014年、常務執行役員(車両・航空部門担当)に就任。2018年に取締役専務執行役員、2021年より現職。

宮部佳也氏(以下・敬称略) この3~5年でいろいろなことが変わったという印象を持っています。まずコロナによってサプライチェーンが寸断されてしまい、電子部品などの供給が一時的に断たれました。それだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻によって穀物、畜肉の供給にも影響が出るなど予期せぬ事態が続きました。

 不安定で、今後がどうなるか分からないという状況下こそ、商社の真価が問われると思っています。現代のビジネスは、地政学的リスク、ブロック経済への対応などが課題ですが、商社の役割の基本は、買い手のお客さまに、世界からサプライソースを探してくることです。同時に、デジタル技術を生かした効率的で変化対応型のサプライチェーン構築も求められています。そうしたお客さまのニーズを探り、応えていかなければいけないと考えています。

 そうした状況を踏まえ、2024年4月から始まった新たな3カ年の中期経営計画は、事業環境の変化に対応する意味合いを込めて、「integration 1.0」と名付けました。3年後の姿を想定してはいますが、変化に対応して、1.1や1.2、あるいは2.0への計画変更もあり得るということを意味しています。