独立系総合商社の兼松は2022年11月、本社ビルを港区芝浦からJR東京駅前のオフィスビルに移転した。新オフィスはフリーアドレスを基本とし、最先端のセキュリティーと柔軟な働き方を実現するファシリティーを整えている。ここで実現するのは、従業員が自分の仕事に合わせて働く環境を選ぶ「アクティビティベースドワーキング(ABW)」である。すでに社内の人の動きはデータ化され、分析も始まっている。人事担当役員の山科裕司氏に、現在の状況を聞いた。
今後30年の成長を託す本社を、再び丸の内に
――2022年11月に本社を丸の内に移転しました。丸の内を選んだ理由はあるのでしょうか。
山科裕司氏(以下・敬称略) 以前の本社が入っていた港区芝浦の本社周辺地域が再開発されることもあり、約800名いる本社従業員の移転プロジェクトが始動しました。当社は1889(明治22)年の創業以来、およそ30年ごとに本社の場所を移転してきました。芝浦の前は京橋、さらにその前は、この丸の内に本社を置いていました。
今後30年の当社の成長を考えたとき、再び丸の内に本社を構えてはどうかという意見が出てきて、最終的には経営トップの判断で、現オフィスへの移転が決まりました。
旧本社が最寄り駅から徒歩で10分以上かかっていたこともあり、利便性は大幅に向上しました。また、丸の内は国際的な人材が交流するエリアでもあり、当社の今後30年のビジネスを考えた上でも、最もふさわしい場所だと判断しています。
――オフィス移転のプロジェクトは、ちょうどコロナ禍だったと思いますが、遂行に困難はありませんでしたか。
山科 移転プロジェクト自体はコロナ前の2019年からスタートしていました。多様な働き方をどう実現するかは会社としても大きなテーマとなっていましたので、プロジェクトは、経営トップの指示の下、総務部が中心となって進めました。20名ほどのメンバーが泊まり込みで深夜まで議論して、コンセプトを形にしていきました。