写真提供:DPA/共同通信イメージズ

 日本を代表する通信キャリアの一つ、ソフトバンク。だが、同社の事業は通信だけではない。日本の企業、そして日本社会の変革を側面から支援するエンタープライズ事業(法人事業)が成長を続けている。本連載では、『ソフトバンク もう一つの顔 成長をけん引する課題解決のプロ集団』(中村建助著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。多くの関係者への取材に基づき、ソフトバンクの次世代の成長の原動力となる法人事業の概要、目指す未来、企業文化に迫る。

 第1回は、企業変革支援の好例として全日本空輸(ANA)の働き方改革をソフトバンクがいかに支援してきたかの事例を紹介する。
(文中敬称略。社長、CEO/COOに関しては代表取締役を、所属部門が複数階層に及ぶ場合は一部を省略したケースがあります。本書は、役職、組織名などに関して、予定を含め2024年2月末時点で公開された情報を基にしています)

<連載ラインアップ>
■第1回 世界初でANAがiPadを大量導入、ソフトバンクが支える航空会社のDXとは?(本稿) 
第2回 孫正義の「タイムマシン経営」の気風が生きる、ソフトバンクの法人事業の原動力とは?
第3回 ソフトバンク式、EXを圧倒的に向上させる「DW4000プロジェクト」とは?
第4回 ソフトバンクの本社東京ポートシティ竹芝、フルスペックの5Gを使ったスマートビルで何ができるのか?
第5回 「これからは一切通信サービスを売るな」ソフトバンクDX本部の新たな事業の発想とは?
第6回 断水の続いた珠洲市、七尾市に手洗いスタンドを設置、ソフトバンクが「ビジネス」として挑む社会課題の解決とは?
■第7回 2万人の従業員にソフトバンク版AIチャットを導入、全社員を巻き込んだ生成AI活用コンテストとは?(9月30日)

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全日本空輸
ANAブランドの全客室乗務員がiPadで「働き方改革」

 世界の航空会社の中で、初めてiPadを大量導入したことが話題になったのが全日本空輸(ANA)である。

 2011〜2012年にかけて、ANAブランドの全ての客室乗務員(CA)約6000人に1台ずつiPadを配布した。このころ低価格を売りにするLCC(格安航空会社)の台頭も著しく、多くの航空会社が競争力を高めるための、サービス品質や生産性の向上を求められていた。

 iPad導入は話題づくりが目的ではなく、当時はまだ言葉がなかったが、これらの課題に応えるDXそのものだ。導入のきっかけは「働き方改革」だった。オフィスで働くデスクワーカーと異なり、CAやパイロット、整備士といったフロントライン部門のIT化は簡単ではない。携帯性が高いiPadでこれらの業務をこなせる意味は大きい。

 現在では、CAのほか、操縦士、整備士、空港地上係員まで含めて、ANAグループでは1万台を超える規模でiPadを業務に活用する。導入から10年以上たった現在も、iPadの活用範囲は拡大の一途だ。システム設計と業務効率化をソフトバンクが二人三脚で支援してきた。

 ANAのデジタル変革室イノベーション推進部業務イノベーションチームのマネージャーを務める渡部由紀子は自分の業務とソフトバンクのかかわりをこう説明する。

「ANAグループでは、デスクワーカーとフロントラインワーカーの双方を対象としたDX視点の働き方改革を推進してきました。

 フロントラインワーカーを対象とした働き方改革によって、CAやパイロット向けにiPadを配布した業務改革が進むなか、デスクワーカーは、Google Workspaceの活用を進めていました。

 より生産性を高めるため、全員のスケジュール管理に使うカレンダー登録のルール作りと、利用実態に基づいた業務の可視化に協力していただいたのが、私個人がお付き合いするきっかけでした。

 CAへのiPadの導入はフロントラインワーカーの働き方改革をけん引したもので、現在もユーザー部門(客室部門)とコミュニケーションを取りながら、お客様へのサービス品質向上と生産性向上を目指していますが、ソフトバンクさんには最初から取り組んでいただいています」