気候変動やコロナ禍、ウクライナ侵攻に起因するインフレの加速などにより、アパレル業界は激動の時代を迎えている。旧態依然とした企業の淘汰が進む中、環境に配慮した新たなビジネスモデルの構築やイノベーションが必要だと強調するのが、A.T. カーニー シニアパートナーの福田稔氏だ。2023年12月に書籍『2040年アパレルの未来:「成長なき世界」で創る、持続可能な循環型・再生型ビジネス』(東洋経済新報社)を上梓した同氏に、アパレル業界の市況現状と求められる対応策、注目を集めるイノベーションの事例について話を聞いた。(前編/全2回)
■【前編】「3つの変化」が直撃、大激変のアパレル業界に現れた「夢の新素材」とは?(今回)
■【後編】急成長の日本発ラグジュアリーブランドが「ニット」で勝負する納得の理由
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成熟期のアパレル市場に起きている「3つの変化」
――著書『2040年アパレルの未来:「成長なき世界」で創る、持続可能な循環型・再生型ビジネス』では、世界のアパレル市場に「3つの変化」が起きているとありました。具体的には何が起きているのでしょうか。
福田稔氏(以下敬称略) 1つ目の変化は、新品市場の成長停滞です。コロナ禍やインフレに伴い、不要不急の衣服が買われづらい状況になったことに加え、サステナビリティを意識する消費者が増えて新品の購入を控えられる傾向にあること、気候変動の影響による暖冬で重衣料が売れにくいことなどが要因です。
今や先進国のアパレル市場は完全に成熟市場となり、一部では衰退期に入ったと見てよいでしょう。
2つ目は、中古市場の伸長です。2021年に20兆円規模だった市場は、2025年には40兆円を超えると予測されています。その要因として、生活者が直接的にやり取りするCtoCアプリが市場に浸透したが大きいでしょう。
CtoCアプリというと、日本ではメルカリが有名です。米国ではthredUPやPoshmark、欧州ではVintedといったCtoCプラットフォームが普及しています。
二次流通市場に積極参入する大手アパレル企業も増えています。ZARAはイギリスで自社の中古品を新たにCtoCで売買するサービスを開始し、日本でもアパレル大手のアダストリアが販売員によるネットフリマサービスを始めています。
3つ目は、ウェルネスが大きなトレンドになっている点です。コロナ禍を経て、「心身ともに健康で幸福であること」に価値を求める消費者が増えており、スポーツやアウトドアといったウェルネス関連市場は成長が続いています。