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 組織や部下が成長し続けるために、リーダーが果たすべき役割とは?本連載では、9年ぶりに日本代表ヘッドコーチとして再登板が決まったラグビーの名将、エディー・ジョーンズ氏の著書『LEADERSHIP リーダーシップ』(エディー・ジョーンズ著/東洋館出版社)から、内容の一部を抜粋・再編集。イングランド、オーストラリア代表ほか数々のチームを率い、ゴールドマン・サックス日本のアドバイザリーボードも務める同氏の、ビジネスにも通じるチームづくりやコーチングの極意に迫る。

 第4回目は、ラグビー日本代表に招かれた女性の心理療法士がチームに与えた好影響、部下と自分自身をストレスから守る方法を紹介する。

<連載ラインアップ>
第1回 ラグビー豪州代表元HC、エディー・ジョーンズ氏が語る「リーダーシップ」の極意
第2回 チームに一匹狼は必要か?ラグビー英国代表が重視した「3つの価値観」とは?
第3回 名将エディー・ジョーンズは、五郎丸歩の心をどう開き、関係性を築いたか?
■第4回 不安やストレスから選手と自分を守るために、なぜルーティンが必要か?(本稿)
第5回 サッカーのイングランド代表チームから、ラグビーの名将が学んだこととは?

第6回 ハイパフォーマンスの鍵を握る「リーダーシップ・サイクル」「3つのM」とは?
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■日本代表に欠かせなかった女性心理療法士の存在

 ヘッドコーチは、コーチ陣にも注意を向けておかなければならない。個々のコーチのパフォーマンスと、コーチ陣の人間関係が良好に保たれているかを定期的に見直すのだ。

 イングランド代表のコーチ陣にも紆余曲折があった。2016年から2019年にかけては、コーチ陣は受け身の意識が強く、私の権限が強かった。私は、これは良くないことだと考えていた。自分の良くない点を指摘してほしかったからだ。コーチたちが切磋琢磨するには、健全な対立や議論が必要だ。

 2019年には、お互いに敬意を持ちつつ、本音で意見を交わせるようになった。各コーチが意思決定プロセスに関わっている。とはいえ、この体制をつくるのに4年もかかった。

 だがワールドカップの後、コーチ陣の入れ替えを余儀なくされた。スティーブ・ボースウィックはレスター、ニール・ハトリーはバースのヘッドコーチになり、スコット・ワイズマンテルは家族のいるオーストラリアに帰った。職業人としても、ひとりの人間としても当然の選択だ。私は彼らがイングランド代表で成し遂げてくれた特別な仕事に感謝している。

 現在、選手と同様、コーチ陣においても新しいリーダーグループを構築している最中だ。時間はかかるだろうが、次のワールドカップまでには、2019年のような素晴らしいリーダーグループができると確信している。

 私は常にスタッフの構成を変えることを考えている。現在は以前よりも女性スタッフの比率が増え、望ましい環境が整ってきた。

 25人のスタッフのうち女性は4人いて、物流管理マネージャー、スポーツ精神科医、マッサージ・セラピスト、報道担当として重要な役割を担っている。

 優れた組織では多様性が重視される。女性スタッフがいるとチームの視点が広がり、繊細な感性がもたらされる。20年前には、女性がチームにいると雰囲気が柔らかくなり過ぎるという考えがあった。だが、現在のイングランド代表の場合はまったく違う。

 女性はチームに深みと広い視野を与えてくれる。それは成功に不可欠なものだ。選手は心を開き、自分と向き合う必要がある。そのとき女性スタッフの存在が大きな助けになる。

 女性スタッフを雇うメリットを学んだのは、日本にいるときだ。そう聞くと、不思議に感じるかもしれない。日本は長く男尊女卑社会と見なされてきたからだ。この国では伝統的に、女性は男性に従属すべき存在であると考えられてきた。妻は夫のためにお茶を出したり、スリッパをそろえたりしなければならなかった。