ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使い、デジタル通貨やデジタル証券のようなデジタルアセットの発行基盤を提供する新会社「Progmat(プログマ)」が2023年10月に設立され業務を開始した。同社のCEOに就任した三菱UFJ信託銀行出身の齊藤達哉氏はProgmat事業の立案者でもあり、早くから日本発のデジタルアセットプラットフォームの実現を目指すとともに、そのためには「法律と技術のマリアージュ(組み合わせ)が不可欠」と考えていたという。その意図はどこにあったのか。Progmat事業のリーガルアドバイスを務め、同社取締役に就任したアンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合健氏、ブロックチェーン技術では国内有数のテクノロジー企業でProgmatに資本参加もしているDatachainのCEO、久田哲史氏が、当時を振り返り意見を交換した。

世界に先駆けて法的な整備が進む

――2022年、日本ではステーブルコインを「電子決済手段」として定義する改正資金決済法が可決され、2023年6月には同法案が施行されました。デジタルアセットにまつわる法律の整備はどのように進んできたのでしょうか。

河合健氏(以下敬称略) デジタルアセットの世界はもともとビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)から始まりました。ビットコインが2009年に誕生し、その後マネーロンダリング(資金洗浄)が問題になったことなどから、対策が求められるようになりました。

 規制については日本が各国に先行し、2017年に暗号資産を規制する改正資金決済法が施行されました。2019年の資金決済法改正で規制が強化され、例えば、暗号資産交換業者の預かり金について、信託銀行などへの信託義務が課されています。

 また、同年の金融商品取引法改正ではセキュリティトークン(デジタル証券)の取引に関するルールが整備され、2020年5月に施行されました。2023年6月には改正資金決済法の施行でステーブルコインも発行と流通が可能となるなど、ここ数年は市場の活性化につながる法整備が着々と進んでいます。

アンダーソン・毛利・友常 法律事務所 外国法共同事業 弁護士 河合健氏。(撮影:宮崎訓幸)

齊藤達哉氏(以下敬称略) 6月に改正資金決済法が施行されて以降は、民間業者がライセンスを取得する動きが出てきています。金融庁も専任のチームを設けて手厚くサポートするようです。どれぐらいのスピード感で実現するのかは分かりませんが、1年後の2024年6月くらいに第1号の業者が登場するといいですね。