近年の世界的なデジタル化の流れを受けて、金融業界を取り巻く環境は風雲急を告げようとしている。その変化は、日本が直面する課題の解決に対しても大きな可能性を秘めているものだ。今後、金融業界はどのように変化し、どのような価値をわれわれにもたらすのか。フューチャー取締役グループCSOであり、 デジタル通貨フォーラム座長を務める山岡浩巳氏が解説する。
※本コンテンツは、2023年1月19日(木)に開催されたJBpress/Japan Innovation Review主催「第4回 金融DXフォーラム」の特別講演1「デジタル化する世界と金融DXの未来」の内容を採録したものです。
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情報・データと金融の関係性
フューチャー取締役グループCSOであり、デジタル通貨フォーラム座長を務める山岡浩巳氏は、情報・データ産業である金融の歴史に触れ、金融の発展段階を5段階に分けた上で、「金融1.0」と呼ぶべきマネーの登場は、言語や火、車輪などと並ぶ人類の大発明であると語る。
「マネーは、さまざまなモノの価値を人間の労働を単位とする抽象的な価値に置き換えることを可能にしました。これにより、情報やデータの処理が飛躍的に効率化し、人間は見ず知らずの他者や将来のモノとも交換ができるようになったのです。『価格』や『金融』『市場』『経済社会』は、全てマネーによって可能になりました。『金融』は、まさにマネーを用いた高度な情報処理であるといえるでしょう」
さらに山岡氏は、ルネサンス後期、経済活動の状況が共有できる「複式簿記」と、情報を低コストで共有できる「活版印刷」という情報・データ処理の2大技術の発明とほぼ同時に「金融機関」が登場したことに注目する。
「20世紀をけん引した代表的企業の成立年を見ると、例えばフォードやGM、USスチールなど、20世紀に成立したものばかりです。これに対し、金融機関の歴史は非常に古い。1番古い銀行の歴史は600年を超えています。このことは、金融機関のビジネスモデルの強固さを示しています」
なぜ銀行のビジネスモデルが強固なのか。山岡氏は「銀行が情報・データ面で圧倒的な優位性を持っていたからに他ならない」と説明する。
「銀行は預金や取引によって、個人や企業の資産状況や取引情報を把握することができます。個人や企業は、お金を借りたいときには有利な条件を得ようと積極的に銀行に情報を提供します。銀行は、そうやって金融に関する多くの情報を蓄積していくことで、情報・データ面で他の産業に比べて圧倒的強者になることができたのです」