8月28日、台湾総統選挙への出馬表明するホンハイ創業者の郭台銘氏(写真:共同通信社)

郭台銘氏、無所属で出馬

 4年に一度行われる台湾総統選挙というのは、誤解を恐れずに言えば、「中国は敵か味方か」を最大の争点にして、「敵」とする民進党の公認候補と、「味方」とする国民党の公認候補が、がっぷり四つに組んで、与野党一騎打ちになるのが、これまでの常識だった。

 ところが、来年1月13日に行われる総統選挙では、大きな異変が起こっている。まず、「第3の政党」民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ)主席(前台北市長)が、出馬を表明。野党・国民党公認候補の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長の支持率を越えてしまった。世論調査によっては、トップを走っていた与党・民進党公認候補の頼清徳(らい・せいとく)副総統(民進党主席)の支持率をも超えてしまった。

【参考】
台湾総統選の泡沫から本命に、柯文哲が目指す「親中」でも「親米」でもない道
「台湾有事は起こさせない」と宣言、台湾総裁選「第三の候補」柯文哲という男
台湾総統選で野党・国民党候補の侯友宜氏、勝敗を左右するのはやはりあの男
台湾与党新党首・頼清徳氏に冷めた視線、与党支持者が忘れない「過去の行状」

 これが「第1の異変」である。そして「第2の異変」が、8月28日に起こった。「台湾首富」(台湾一の富豪)の異名を取る、台湾最大の企業・ホンハイ(鴻海精密工業)の創業者・郭台銘(かく・たいめい)元会長が、出馬を表明したのだ。

 国民党籍の郭元会長は、党内の公認候補調整で侯候補に敗れ、一時は「侯候補を支持する」として撤退した。ところが侯候補の支持率が伸び悩んでいることから、党内で「待望論」が巻き起こり、その声に応える形で、無所属での出馬となったのだ。