コスタリカ戦前半に先制ゴールを決め喜ぶ猶本光(写真:VCG/アフロ)

 7月26日に行われたサッカー女子W杯グループリーグの第2戦、コスタリカ相手になでしこジャパンは前半の25分、27分に立て続けに得点し2―0で勝利、最終戦を待たずにグループリーグ突破をスペインと共に決めた。今回は得点を決めた猶本光と藤野あおばにスポットライトを当てる。

なでしこの人気No1だった猶本の挫折

 猶本光は出身地の福岡県のクラブチームでサッカーをしていたが、2010年、U-17に抜擢されて全国デビューを果たした。

 2012年に東京で開催されたU-20女子W杯でも代表に召集され、チームは3位に輝いた。爽やかなルックスを持つ猶本の存在は、国立競技場に2万7000人もの観客を集めるほどのなでしこ人気の一翼を担ったのも確かだった。多くの週刊誌などが猶本のグラビア特集を組んだものだ。

2012年02月、なでしこジャパン合同合宿に参加した17歳当時の猶本光(写真:アフロスポーツ)

 ただ失礼ながら、当時の猶本は人気が先行している選手だった。選手として抜きんでた特徴があるとは思えなかった。ボランチの選手であったが、スピードがあるわけでもなく、フィジカルが強いというワケでもないし、得点力もそれほどなかった。自ら切り込んで行くタイプでもなく、ボールを後ろに叩くプレーが多くて、他人任せのプレーに失望感を何度も感じたものである。自らがボールをキープできる力量がなかったこともその理由であろう。

 現在のなでしこを見れば、エースの長谷川唯やナンバー10の長野風花をはじめ、遠藤純や杉田妃和など、ボールをキープできる選手が多く、タメを作ることができるので攻撃に厚みが出る。また19歳の藤野あおばは、ボールキープに自信を持っているのがプレーでよく分かる。だから慌てることもなく、相手をいなして攻撃に結び付けられるのだ。当時の猶本はずっとそれができず、バックパスで攻撃につなげるスタイルに終始するような印象だった。

 テレビ中継のアナウンサーが「クレバーな猶本はバックパスで攻撃の機会をうかがっています」などとコメントすることもあったが、自分が得点を取るという気概のない選手というのは相手にとっては“安全パイ”であり、怖い存在とはならない。