少子化で経営が厳しさを増す私立大学では専任教員の地位も危うくなりつつある(写真:アフロ)

大学に入学する年齢である18歳人口は、少子化の影響で減少が続く。大学進学率が上昇したとはいえ、私立大学はこの50年間で倍増した。淘汰の時代を迎える中、生き残りのため再編や統合を決断する大学も増えるだろう。だが、その再編の失敗によって理不尽ともいえる大量リストラが発生した大学がある。ここ10年ほど、日本全国の大学で、耳を疑うような事件が頻発している。その一端をレポートする。

(*)本稿は『ルポ 大学崩壊』(田中圭太郎、ちくま新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

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 大学が再編や統合を迫られたとき、大学で働く教職員はどうなるのか。実際に大学再編をめぐり、教員の大量リストラに踏み切った大学がある。奈良県の学校法人奈良学園が運営する、奈良学園大学だ。

 奈良学園は2013年11月、約40人の教員に対して、2017年3月までに転退職するように迫った。

 理由として説明されたのは教員の「過員」だった。リストラの対象になった約40人に非はない。それどころか、正確に言えば、奈良学園による「学部再編の失敗」が直接的な原因だったのだ。

「私たちは大学による学部の再編失敗のしわ寄せによって解雇されました。こんな解雇が許されたら、大学改革や再編の名の下で理不尽な解雇が可能になります。絶対に許すわけにはいきません」

 こう憤るのは、当時奈良学園大学の教授だった川本正知氏。川本氏は京都大学大学院文学研究科博士後期課程を単位取得退学し、複数の大学や短大で非常勤講師を務めたあと、1989年に奈良学園大学の前身、奈良産業大学に講師として着任した。1999年から教授の立場にあった。

 リストラを迫られた40人のうち、多くの教員は他の大学に移るなどして、若干の優遇措置と引き換えに大学を去った。その他の教員は雇い止めされた。川本氏ら8人は教職員組合を結成して最後まで交渉を試みたが、2017年3月末に解雇されたのだ。