早稲田大学は多くの付属校で志願者数を減らした

(安田 理:安田教育研究所代表)

 2023年度の中学入試は首都圏で過去最高の受験者数を更新するなど、中学受験熱はますます高まっていますが、今年見られた現象の一つに、付属校人気が止まったことが挙げられます。特に目立つのが早稲田系、慶應系、明治系の付属校の不振でした。そのほか日大系も多くの付属校で受験者数を減らしました。なぜ「付属離れ」が起きたのか、探ってみたいと思います。

付属校志向が高まってきた背景

 まずこれまでの付属校志向の背景を振り返っておきましょう。

 2016年、政府の「地方創生政策」の一環で、23区内の大学の入学定員の厳格化が始まりました。定員を守るには合格者の発表数を減らすしかなく、有力私大が軒並み難化しました。近年の付属校志向はこれがいちばん大きな要因でしょう。加えて、大学側が総合型選抜、学校推薦型選抜の募集枠を広げる方向にあるため、一般選抜の募集枠が年々狭くなっていることも挙げられます。

 次に、大学が付属校や系列校を増やしていることも人気の要因です。中央大学附属横浜(前横浜山手女子)、青山学院横浜英和(前横浜英和女学院)、目黒日本大学(前日出)、青山学院大学系属浦和ルーテル学院(前浦和ルーテル学院)といった学校が近年、付属や系属、準付属となっています。

青山学院大学の系属校になった青山学院横浜英和

 これらの動きから、わが子の大学受験時には一般入試がますます狭き門になるのではと保護者が警戒し、中学の段階で付属校に入れようとしたことが付属校志向につながりました。

 また、「探究」「リベラルアーツ」「体験学習」といった近年の教育トレンドが付属校に合っていることも支持された背景でしょう。進学校はどうしても大学受験のための教科学習に注力せざるをえませんが、付属校は時間的に余裕があるのでこうしたことに力を入れられます。レベルの高い卒業論文を書かせるなど、学習面でも付属校ならではの良い面が多数あります。

 受験勉強に時間を取られることなく好きなことを伸ばせる、大学教授の出張授業がある、大学の施設を利用できる、長期間一緒に過ごすことで濃密な友だち関係を築ける・・・といった良さが付属校には多数あります。こうしたことが重なり合って付属校志向が強まってきたわけです。