「奈良地裁の判決は、私たちの解雇が労働契約法で定められている解雇の条件を欠いていると認定しました。さらに、大学教員は高度の専門性を有するので、地位の保障を受け取ることができると示してくれました。この判決に感激しています」

 しかし、この判決を奈良学園は不服として控訴した。原告側は解雇の無効や復職について話し合いでの解決を求めたが、やはり奈良学園は拒否していた。

 問題が解決したのは2021年5月だった。大阪高裁は、奈良地裁の判決を前提にした和解での解決を奈良学園側に説得して、最終的に合意に至った。和解の内容については口外禁止条項が付されているため詳しい内容は明らかにされていないが、原告側の弁護団によると「定年前の2人の大学教員が職場復帰されるなど、原告の長い闘いが報われる内容」だったという。

 大量リストラが通告されてから高裁での和解で解決するまでに約8年、提訴からは約4年の月日が流れた。川本氏は勝利に等しい和解を喜びながらも、複雑な思いで闘争を振り返った。

「私たちは大学の研究者であり、教育者です。大学における研究・教育において失われた4年間という時間は取り返しがつきません。裁判に勝ったとはいえ、学問的な面においても、精神的な面においても、リハビリテーションが必要な状況に置かれています」

 不当な解雇に対して裁判を起こした場合、結論が出るまでには長い時間がかかる。闘い続けるのは容易ではなく、全国には泣き寝入りを余儀なくされた教員もいるだろう。

 それでも諦めなかった奈良学園大学の元教員たちの闘いは、私立大学の経営側による身勝手な大量解雇を許さない大きな前例となった。

ルポ 大学崩壊』(田中圭太郎、ちくま新書)