強いリーダーシップによるトップダウン型改革は瞬間的な派手さはあるが、時間が経過したときに、どれほどの評価を得られるのだろうか。写真は2003年、首相在任中の小泉純一郎氏(写真:ロイター/アフロ)

(篠原 信:農業研究者)

 イノベーションに必要な要素は恐らく、ボトムアップ型の意見集約と、責任をとるリーダーの存在の2つだ。

 ボトムアップ型とは部下が活発にアイディアを出しやすい環境を担保すること。そしてそこから目利きのリーダーがアイディアを吟味した上で、開発の成否に関する責任を負う、という体制。

 この体制ならば、アイディアを採用された部下は意気に感じてなんとしても成功させたくなる。アイディアを採用してくれたリーダーが責任を問われるような結果になってほしくない。こうして部下の当事者意識は高まり、自然に意欲が湧くのだと思う。

 ではトップダウン型でリーダーが部下に自分のアイディアを押しつける場合はどうなるだろう。

 部下からは、アイディアの欠点を指摘しにくい。仮に指摘したとしても、リーダーにたてつく形になることを恐れる中間管理職が、部下の声を黙殺する可能性も高い。

 結局、誰もが黙って言うことを聞くしかなくなる。業務命令だからやるにはやるが、意見を聞いてもらえないから自分事としてとらえられない。やらされている感満載。これではモチベーションは上がらない。

トップダウン型こそ責任があいまいに

 なによりトップダウン型の最大の問題は皮肉にも、責任をとる人がいなくなることだ。

 失敗したのは、そもそもリーダーのアイディアがひど過ぎたのが原因だ。だが、そのことを部下からは指摘しにくい。中間管理職も、リーダーの欠点をあぶり出すことは避けたい。むしろ部下に責任をなすりつけて、自分だけはリーダーからの覚えをめでたくしたいところだ。とはいえ、アイディアはリーダーが発案したというのは隠れもない事実。そう簡単になすりつけるわけにはいかない。