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(篠原 信:農業研究者)

 イノベーションの必要性がこれだけ叫ばれている割には、私たちはどうやったら創造的な仕事が可能なのか、いまひとつ分かりやすく教えてもらっていない。

 先日、『イノベーションのジレンマ』の著者クレイトン・クリステンセン氏が亡くなった。本書は、イノベーションを語る上で避けて通れないバイブル。破壊的なイノベーション技術は、既存の古い技術と比べて見劣りするにもかかわらず、結局は市場を席巻し、古い技術を駆逐する。実にジレンマに満ちたイノベーションの実態を明らかにしてくれた名著だ。

 とはいえイノベーションの方法が書いてあるとは言いがたい。「破壊的イノベーションは劣っているように見える」という指摘はその通りかもしれないが、ではどうしたらイノベーションを起こせるのか、その方法までは、その書籍では語られていない。

イノベーションは天才だけのもの?

 他方、イノベーションは天才によって起こされるものだから、天才には十分な報酬を渡し、彼らに存分に活躍してもらった方がよい、という論説を見ることがある。そうした文章を読むと、「創造性のない人間は低賃金で甘んじろ」と言っているのかなと、裏のメッセージを嗅ぎとってしまうのは、私だけだろうか。

 天才には高収入を。凡人は創造できないのだから低賃金を。格差社会は当たり前。そんな暗黙のメッセージを感じ取って、私は気分が暗くなる。

 創造性を凡人の手にできないか。創造性だけは天才の独占物で、凡人には決してなし得ないものとされているが、あえて凡人にも可能なものにし、それを陳腐化する方法はないだろうか。例えば文字は、発明された当初は限られた人間だけが使用を許される特別なものだったが、教育によって識字率は大幅に向上し、ある意味、読み書きは陳腐化した。それと同じことを、創造性についても起こすことはできないだろうか。