英フィナンシャル・タイムズ(FT)の読者投稿欄に、ストイックという言葉の同義語としてジャポニックという新語を作るべき時ではないかとのコメントが寄せられた(「津波とセネカ、そしてサムライの倫理」 )。どんな災難や危機に直面しても慌てることなく冷静に判断して行動し相手に対する思いやりを忘れないという、日本人としては何ともありがたい英語による新語である。

西洋人が日本を形容するストイックという言葉

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 セネカは言わずと知れた古代ローマ時代の哲学者で、ストア派哲学の代表的継承者である。ポンペイの地震について論じた記述もある。

 そのストア派のストアという言葉が英語のストイックの語源になっている。

 ストイック、つまり、平常心を保ち、禁欲的な生活を送ること。今回の惨事に直面した日本人が冷静な行動を取っているのを、英語メディアの多くが、このストイック(Stoic)という言葉を使って表現している。

 これに対し、FTの読者投稿欄では、読者同士がセネカの言葉を引き合いに出したり、ジャポニック(japonic)という新語を作るべきではないかと提案したりしているわけだ。

 「津波とセネカ、そしてサムライの倫理」の筆者であるFT東京支局長のミュア・ディッキー氏は次のように書いている。

 「被災地では、生き残った人々の多くが、自分たちが喪失に対して全般的に冷静かつ現実的な反応を見せているのは、災害は起こるものだと昔から受け入れてきたからだとか、悲しみや痛みを表に出さないことを讃える日本のサムライの倫理がまだ残っているからだと話している」

 「確かに、セネカの思想と、禅の影響を受けた教養ある武士たちが信奉した考え方との間には、興味深い共通点がある。例えばセネカは、朝目覚めたら、その日1日に起こり得る悪い出来事をすべて想像するよう説いていた」

 「『この訓練は、ただの遊びではない』。哲学者のアラン・ド・ボトン氏はこう言う。『その日の夜に自分の住む町が火事になったり、自分の子供が亡くなったりした時に備えるのが狙いだ』」

 セネカの思想、そして行動と日本の武士道を重ね合わせているのだ。日本で武士の家に生まれた子供は、早くから死に臨む時の態度を徹底的に教育された。