日本の大地震について、米国では大手の新聞もテレビも大々的な報道を展開している。政府の動きを見ても、オバマ大統領以下、クリントン国務長官らが次々に日本への激励や支援の意向などを表明した。民間でも各界で日本への救済や支援の動きが出てきた。
しかし、こうした米国側の広範な反応の中で私が特に興味を引かれたのは、史上稀にみるほどの無惨な被害に遭った日本国民の冷静さや沈着ぶりを、驚くべきことのように伝える米国側の報道だった。
これほどの被害に遭いながらも、なお日本人はパニックには陥らず、秩序を保ち、礼儀さえ保って、お互いを助け合っている、というのだ。これは日本人から見れば当然とも言える状態である。だが米国では、まるで異様なことのように報じられ、礼賛されている。日米の文化の違い、社会の相違とでも言えるだろうか。
「略奪のような行為は驚くほど皆無なのです」
まず、CNNテレビ(CNNのサイト)の12日夜のニュース番組が顕著だった。この番組では米国のスタジオにいるキャスターのウルフ・ブリッツアー記者と、宮城県・仙台地区にいるキュン・ラー記者とのやりとりが日本国民の態度を詳しく伝えていた。
ブリッツアー記者が「災害を受けた地域で被災者が商店を略奪したり、暴動を起こしたりという暴力行為に走ることはありませんか」と質問する。ラー記者はそれに対し、以下のように答えた。
「日本の被災地の住民たちは冷静で、自助努力と他者との調和を保ちながら、礼儀さえも守っています。共に助け合っていくという共同体の意識でしょうか。調和を大切にする日本社会の特徴でしょうか。そんな傾向が目立ちます」
ブリッツアー記者が特に略奪について問うと、ラー記者の答えはさらに明確だった。
「略奪のような行為は驚くほど皆無なのです。みんなが正直さや誠実さに駆られて機能しているという様子なのです」
この日本からのラー記者の報告はCNNテレビで繰り返し放映された。日本人はこんな危機の状態でも冷静で沈着だというのである。明らかに日本人のそうした態度が美徳として報じられていた。その報道は全米向けだけでなく、世界各国に向けても放映された。