東日本大震災は戦後最悪の災害になったが、地震や津波以上に注目を集めているのが福島第一原発の事故である。
本稿の執筆時点では、1号機から3号機までの原子炉は、冷却装置は壊れているが海水が注入されており、それほど危険な状態ではない。懸念されるのは、3号機と4号機の使用済み核燃料が過熱していることだ。
これは大気中に大量の放射性物質を拡散する可能性があるが、核反応が再開されるリスクは小さい。原子炉の「爆発」を騒ぎ立てるメディアが多いが、1号機と3号機で起こった水素爆発は、建屋を吹っ飛ばしただけで、原子炉が爆発したわけではない。
なぜ「史上2番目の原発事故」になったのか
水を冷却材に使う軽水炉で想定される最悪の事故は、炉内の水が抜けて燃料棒が空だきになり、核反応が暴走して高温で溶けた炉心が原子炉を破壊し、大量の「死の灰」を周囲にばらまく炉心溶融である。
福島第一の場合には全面的な炉心溶融は回避されたので、チェルノブイリのような大事故になることは考えられない。ところが政府が「炉心溶融が発生した」と発表したため、海外メディアが“meltdown”と報道し、チェルノブイリと混同される結果になった。
しかし、格納容器を覆って放射線を防ぐ建屋が破壊されたことは、米スリーマイル島の事故でもなかった大失態で、これによって格納容器から出た放射性物質が大気に出ることが避けられなくなり、チェルノブイリに次いで世界史上2番目に悪い原発事故になった。