経済産業省の原子力安全・保安院は東京電力福島第一原子力発電所の1~3号機の事故に対して、事故の評価を1979年に米国のスリーマイル島の原発で発生した事故と同じ「レベル5」に引き上げた。

「自然の脅威によるものとはいえ」に、強い疑問

 これに対し、東電の清水正孝社長は3月19日未明、次のようなコメントを発表して福島県民および日本国民に謝罪した。

 「極めて重く受け止めています。発電所の周辺地域の皆様や県民、社会の皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけして、心より深くおわびします」

 「大規模な地震に伴う津波という自然の脅威によるものとはいえ、このような事態に至ったことは痛恨の極みで、今後も政府や各省庁、自治体の支援と協力を仰ぎながら、事態の収束に向けて全力を挙げて取り組んでいきます」

 ちょっと、おかしくないだろうか。ちょっとではない。信じられないほどおかしい。そもそもテレビや新聞のニュースでは「予測を超える自然災害だから仕方がない」というようなコメントが様々な専門家やキャスターから発せられている。

 予測を超えるとは何なのか。どれだけの震度や津波を予測していたのか。過去の震災事例を徹底的に調べ上げている作家の広瀬隆氏によると、この程度の揺れや津波は予測されていなければおかしいという。

福島を襲った津波はこれまでに例がないことではない

 「揺れに関しては直下型の地震ではないので、阪神・淡路大地震の時に比べて揺れは深刻な影響を与えなかったと考えられます。また、津波に関しては2004年に発生したスマトラ沖地震と同じような規模だと考えられます」

 安心・安全が絶対の生命線である原子力発電所である。世界で過去に事例があるような地震に対して十分な対策が施されていなかったというのは、どういうことなのか。

 これが火力発電所ならば、発電所が流され発電不能に陥るだけで済む。しかし原発はいったん大規模な事故を起こせば、何百年にもわたって深刻な影響を及ぼす。

 1基の大事故が日本列島全体を少なからず放射能汚染し、国民の生活を困難にする。だからこそ安全には絶対をもって対処しなければならないはずだ。