3月13日日曜日、午後7時半。パリ・ノートルダム寺院、香の立ち込める堂宇に響く鐘の音を格別の思いで受け止めた。寺院に居並んだ人の数は1000人あまり。その最前列には、在仏日本大使の姿。
日本の震災を見舞うミサに1000人が参列
この日の祈りは特別に、地震の犠牲者、被災者をはじめとする日本の人々に捧げられた。
日本の地震を見舞うためのミサが行われるということは、前日に友人から口づてで知った。ノートルダム寺院のウェブサイトを確認すると、確かに、日曜日の午後6時30分から、とある。
ノートルダムと言えば、ご承知の通り、花の都パリの景観の要とも言うべき世界遺産。パリ大司教をいただくカトリックの大寺院である。
予告されている時刻の1時間ほど前に、私はここに着いたのだが、その様子は、どの日曜日とも変わらず、世界中からのツーリストで賑わう大観光地。正面の入り口付近には、日本の被害へのミサを知らせる看板などは特別には出ていなかった。
だが、それからしばらくして、開始20分前くらいに堂内に入ってみると、後方の椅子に至るまで既に埋まっていて、空いている席を探すのが難しいほど。
讃美歌の合唱は既に始まっていた。か細いソプラノの声でメロディを口ずさみながら、目配せで隣りの席をすすめてくれた親切な女性の脇の席に、ようやく私は滑り込んだ。歌がやんでみなが着席すると、女性は小声で話しかけてきてくれた。
「カレム(四旬節)のこの時期には、たくさんミサが行われるけれど、今日は特別に人が多いわね」
40歳くらいと見て取れるその方はブラジルの生まれ。ミサにも定期的に参加する敬虔な信者であるらしかった。
大司教が登壇すると、開口一番に、「日本の地震被害に見舞われた人々へ」という旨の言葉が述べられ、ミサは始まった。堂内の係員の言うところでは、椅子の数は800から900。