「秩序がこんな大惨事を克服するのに役立っている」――東北関東大震災が起こった翌日3月12日、スイス最大の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、こんな見出しの記事を載せた。

非常時に冷静さを保つ~西洋人には理解できない

東日本大震災被災者支援レポート(1)

津波に飲み込まれ瓦礫の山となってしまった町〔AFPBB News

 スイスのどの新聞でも、津波や地震の記事、災害の経済的影響、在日スイス人の地震体験談などを大きく載せていた中で、異色の記事だった。

 大惨事の中にあっても、規律を守り、礼儀正しい行動をする日本の人たちの様子はスイスでも報道されている。

 非常時に冷静さを保てることは、一般の西洋人にとって理解しにくい。スイスでも、近年、寿司やマンガなど以外にも、日本の文化が幅広くかなり紹介されるようになってきたものの、まだ日本や日本人についてよく知らない人は多い。

 「なぜパニックにならないのか」「なぜ、そんなに我慢強いのか」と不可解に感じる人も多いのだろう。この疑問を、同紙は日本の芸術や日本的生活様式に精通したドイツ在住の美術史家クヌート・エドラー・フォン・ホフマン氏への質疑応答という形で説明した。

 1つには、よく言われることだが、歴史的な観点で、日本人が自然災害に慣れていて、どのように向き合っていくかを学んできたからだ。

自然災害は天罰だと考える米国人

 津波や地震は何も新しい事ではなく昔からあった。自然災害に対して多くの人が大変なことではないように振る舞うのは、日本人の精神であると答えている。

 もう1つのカギは宗教だ。フォン・ホフマン氏は仏教を挙げる。カリフォルニアでの地震を引き合いに出し、米国人は些細な自然災害を大惨事のように受け止め、天罰だと信じがちだが、日本では全く異なるとする。

 仏教(特に禅)は一神教のような強力な神を持たず、自然災害は自然の一部であると見なすため、日本人の心の支えになる。人々は生存したらそれを喜び、すべてを元通りにして落ち着きを取り戻すようにする責任があると考えていると解説している。

 この記事は、地方新聞などスイスの複数のメディアが各自サイトで即日転載していた。